新白河原人17 丸太小屋をつくる9
〜感動した!

【特別公開】守村大『新白河原人 遊んで暮らす究極DIY生活』

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丸太小屋をつくる9 感動した!
 

風がくすぐったい。自然の律動に感応した私の内なる動物部分が、足下から浮ついて“春だよーん”とふるえている。ぷるぷる。

鉄人君(ユンボ)で吊って、半割り丸太と3/4丸太を土台の上に井型に置いた。4つの角にノッチを刻み組み合わせると、1段目、壁組みの基部が立ち上がる。

私は両手でスクライバーを抱え持ち、その先端を丸太に軽く押し当て、なおかつ、2つの水準器のアワを見つめて鉛直を確認し、スクライブ作業を行っている。慎重に、沈着に、確実に、ぷ、へ、と、ま、ぶっはーっ。息を詰めて動揺を極力抑えて作業を終えると、少しふるえているものの、しっかりとした線が引けている。うれしい。

“ガンタ”と称するテコの原理を用いた道具で3/4丸太を裏返し、いよいよノッチを刻む。大工さんの仕口はノミや鋸による精緻な仕事だが、丸太組みはチェーンソーで大胆に挑む。しかしながら、1ミリの失敗は壁組みに1ミリの隙間を生むのは原理で、豪快な見た目に相反してかなり繊細なタッチが求められる。ちょっと手元をあやまっと、ぐわっと派手に相手を抉ってしまう凶器じみた道具での緻密な加工は、馴れないうちは気負ってしまい、はなはだ緊張する。

うわっ、ちょっとハミ出した。わぱっ、鼻の穴に鋸屑が、おのれ。集中、集中。ここを先途とわきまえて、精神一到なんとやら。

ほう。初めての仕事にしては上出来のノッチが刻まれている。ノミと手斧で細かい仕上げを施し、ガンタでもってヨイショと返すと、ガポンと小気味よい音をたて、半割り丸太と3/4丸太がすっきりと組み合わされた。

なんということだ。ゴツゴツした丸太と丸太が、豪快な部材同士が、ビッタシと、シッカと、きちんときちんと組まれている。ささやかな始めの一歩であるが、確固たる壁となって、目の前に立ち上がっているではないか。

「感動した!」

五十男に残る怪しげな無垢は、正直に、裏腹なく、そんなことばを腹の底から押し上げた。

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守村 大(もりむら・しん)
1958年生まれの漫画家。モーニング(講談社)にて連載された『万歳ハイウェイ』『あいしてる』『考える犬』など、代表作多数。現在東北新幹線・新白河駅から車で10分の里山で開墾生活をしながら、モーニングにて『新白河原人』の漫画版『ウーパ』を連載中。

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『新白河原人 遊んで暮らす究極DIY生活』

講談社 定価:1,500円(税別)

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