野球
保険金詐欺で誤認逮捕の悲運を乗り越え、初出場
「破天荒監督」率いる大阪偕星が甲子園にドラマを起こす!

まるで「ルーキーズ」の世界

「リアル・ルーキーズ」

グラウンドには、やくざまがいの怒号が響いていた。

「やる気あるんか? 勝ちたいんか? おうコラ、ぼけコラ、アホちゃうか。甲子園に出ただけで満足かコラ!」

選手に檄を飛ばすのは大阪偕星学園の山本晳(セキ)監督(47歳)である。彼の言葉は直情的で乱暴だ。しかし、暴力的な印象は受けない。柔道家の山下泰裕氏に似た風貌から投げかける視線は、愛と情熱に満ちている。

第97回全国高校野球選手権大会に初出場した同校は、1回戦で比叡山に勝利し、13日に行われる2回戦、九州国際大付属との試合を控えていた。打撃ゲージの後方に置かれたテレビに対戦校の映像を大音量で流し、相手エースを想定したフリーバッティングを山本監督は見守っていた。ただ叱るだけでなく、脇を締め、きっちり逆方向へ打ち返した選手には「それだよ、それ。ナイスバッティング!」と褒めちぎる。

岡山出身の山本監督は、津山商業から大阪学院大に進学し、卒業後は香川・尽誠学園でコーチを務めた経験を持つ。その後、アメリカに留学し、またトライアウトを受けて韓国のプロ野球・太平洋ドルフィンズでプレーした経験もある。野球の知識や技術理論には絶対の自信を持っている。

偕星学園には、いわゆる野球エリートはいない。ボーイズリーグやシニアリーグで補欠だった選手が圧倒的だという。また、主砲の田端拓海や西岡大和など、中学時代に素行が悪く〝ヤンチャ〟していた球児や、天理高校を退学して編入してきた外野手兼投手・姫野優也のようなドロップアウト組が集まっているのも大きな特徴だ。テレビドラマにもなった人気マンガになぞらえて、偕星学園ナインが「リアル・ルーキーズ」と呼ばれるゆえんである。

山本監督はいう。

「ずば抜けた選手は同じ大阪でも大阪桐蔭、履正社に行く。うちに来るのはどこも取らない選手ばかり。そういう選手でも、基本に忠実に、きちっと練習すれば、激戦区で一番にもなれるんです」