ブルーバックス前書き図書館
2015年08月19日(水) 中村亨

これが解けたら100万ドル!
〜数学者を魅了し続ける「リーマン予想」とはなにか

中村亨=著『リーマン予想とはなにか』全ての素数を表す式は可能か

upperline
〔photo〕iStock

ギリシア時代からの数学者の夢
全ての素数が完全にわかる!

「リーマン予想」とはリーマンのゼータ関数と呼ばれる複素の関数の値がどのような場合に0になるか、という問題です。もし0になる場合を完全に知ることができれば、長い間、数学者の大きな夢であった「全ての素数を完全に知る」ことができるのです。

はじめに

 数学は、同じ自然科学の中でも、物理学や化学とは大きく異なる点があります。その一つは、画期的な業績を上げても、それで大金を手にするようなことは基本的にないだろうということです。しかし、中には例外もあります。その一つが、本書のテーマである「リーマン予想」の解決です。成功すると、少なくとも100万米ドルを手にすることができます。もちろんそのような大金を提供しようとする人がいるわけは、リーマン予想の解決が、私たちがこの世界を理解するうえで、とても大きな進展をもたらすだろうと期待されているからです。

 リーマン予想というのは、今から150年ほど前に生まれた数学の問題です。問題文としては今でも、当時と変わっていません。150年間何も変わっていないのなら、この間数学者は怠けていたのでしょうか? もちろんそんなことはありません。多くの数学者が、血のにじむような努力を重ねてきました。関連する研究の成果は、数学の世界を大きく変えてきています。それでも、いまだ解かれていない難問なのです。

 ところで、リーマン予想とはどのような問題でしょうか。

 それは、「リーマンのゼータ関数と呼ばれる複素数の関数の値が、どのような場合に0(零)になるか」という問題です。リーマンは、このような場所がどこであるかを予想したのですが、彼自身はそのことを証明することはできませんでした。そこで、後世にそれが正しければ証明し、間違いであれば反例を示すことが問題として残ったのです。

 しかし、ある関数の性質が、どうしてそこまで重要な問題になるのでしょうか。

 実は、リーマンのゼータ関数がどのような場合に0になるかを完全に知ることによって、原理的には全ての素数を知ることができるようになるのです。素数は、古代ギリシャの昔から、人々の興味を惹いてきました。それでも疑問は次々にわいてきます。素数の全てを知ることができれば、これまでにわからなかった素数に関する多くの事柄がわかることになります。また、素数にまつわる新たな発見ももたらされるでしょう。そのような期待があるからこそ、ここまでリーマン予想が注目されるのです。

 注目の高さの反映として、リーマン予想をテーマにした書物はたくさん出版されています。しかし、リーマン予想と素数を結びつける、リーマンの研究の数学的な詳しいことについては、専門書を読むしかないでしょう。そこで、本書は、その点に、少しだけ踏み込んでみます。でも、専門書では読者がもっていると仮定されている数学的な知識も、できるだけ説明するようにします。ただし、専門書に比べるとどうしても少しざっくりとした説明になることをご容赦ください。

 本書では、第1章で、リーマン予想と素数の結びつきについてのあらすじを説明します。数学的な詳しいことにあまり興味がない、あるいは理解する自信がないという人でも、この章は頑張って読んでみてください。その後の第2章から第5章は、数学的なことを少し踏み込んで知りたい人のために、第1章の説明のうち、ポイントとなる部分について説明していきます。とはいえ、あまり専門的にならないようにします。また、少し込み入った数式の操作が必要な事柄については、付録にまとめます。最後の第6章では、リーマン予想が生まれた後の研究の進展についてまとめます。

 したがって、とにかく全体像を知りたいという人は、第1章に続けて第6章を読めば、十分だと思います。

 リーマン予想が、いまだ解かれていないのは、究極まで考え抜かれた問題だったからなのです。このことは、この問題を考え出したリーマンが、大変に優れた数学者だったことを物語っています。実際、現代数学の基礎は、彼によって築かれたといっても過言ではありません。本書では、リーマンが現代の数学の基礎に広くかかわっていることもわかるように工夫してみました。

 この本が、リーマン予想について、読者がこれまでより深く理解する助けになることを願っています。

 

著者 中村亨(なかむら・あきら) 

数学の研究者ではなく、下手の横好きの立場から一般向け書籍の執筆等を行っている。一九六三年生まれ、東京大学大学院修了(理学修士)。主な著書に、『数学21世紀の7大難問』『ガロアの群論』(いずれも講談社ブルーバックス)、『インド式計算ドリル』(晋遊舎)ほか。二〇〇六~二〇一三年に、フジテレビ系列「たけしのコマ大数学科」に先生役(特別顧問)として出演。
 
『リーマン予想とはなにか』
全ての素数を表す式は可能か

中村亨=著

発行年月日: 2015/08/20
ページ数: 224
シリーズ通巻番号: B1828

定価:本体  900円(税別)
     ⇒本を購入する(Amazon)
     ⇒本を購入する(楽天)

 
(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)

 

ブルーバックス前書き図書館のメニューページはこちら

 


このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
関連記事


underline
アクセスランキング
1時間
24時間
トレンドウォッチ
編集部お薦め記事