「女の子が好き」が不安であり続けた、つながれる場が足りない――LGBT活動家・東小雪の次のアクション

2015.8.20 THU

2015年3月31日。火曜日。渋谷区。

この日、同性パートナーシップ条例が可決した。パートナーシップ証明書を発行するという全国初の条例は、4月1日から施行。このことはすぐさま話題になるとともに、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなどの性的マイノリティ)の暮らしやすいまちづくり、社会づくりの大きな一歩となった。

東京の中心地である渋谷から、ダイバーシティ(多様性)のある社会を実現する。そんな渋谷区神宮前にはLGBTが集まるカラフルステーションという場所がある。

1階がアジアンダイニング、2階はシェアオフィス、建物全体はギャラリースペースとなっている。LGBTアクティビストの東小雪さんは、このシェアオフィスに入居し、事業や活動をおこなっている。東さんは「同じ価値観や思いをもつ人たちが集まり、つながれる場所やコミュニティが重要」だと語る。

その背景には自身の高校生時代の経験があった。地方に住んでいたため、マスメディアを通じて、LGBTに関する情報を得ることができなかったのだ。では、いま、LGBTの認知や理解に関する地方と都市の差はどれくらいあるのか。そして東さんにとってのメディアとは?(取材・佐藤慶一、徳瑠里香、藤村能光[サイボウズ式]/写真・神谷美寛)。

東小雪さん カラフルステーション前にて

地縁・血縁コミュニティから、同じ価値観のつながりへ

私は8ヵ月ほど前に渋谷区神宮前に引っ越してきました。議員さんが動いていたり、LGBTの理解が進みそうな場所に住みたいと考えていて、渋谷では現区長の長谷部健さん(当時は区議会議員)や渋谷区議の岡田マリさんらが、数年前からLGBTに関する議会質問をされていたことを知っていました。

そして、カラフルステーションという場所があることも大きな理由です。ここは、1階がアジアンダイニング、2階がシェアオフィスとなっていて、性同一障害で、LGBTの分野で10年以上活動されている杉山文野さんが共同経営しているんです。だから、たくさんの仲間が集まります。同じくLGBTが集まる新宿二丁目は夜にお酒を飲むところですが、ここにはランチに来る人もいれば、シェアオフィスで働く人もいます。

シェアオフィスにはLGBT当事者だけでなく、アライ(LGBT支援者)の方も入居しています。また、アジアンダイニングのご飯は美味しいので、LGBTのことを知らなくて来ている人もいると思います。そこで働く人の約3分の2はLGBTなので、LGBTだけど自分らしく働きたい人にとって大切な仕事場であり、拠点となっています。

東京はご近所付きあいが薄いと言われますが、神宮前にはLGBTの仲間が多くいて、パートナーといっしょに受け入れられていることはとても心強いです。昔は地縁・血縁でつながるコミュニティがメインでしたが、いまはそれが変わりつつあり、同じ価値観をもつ人が集まってコミュニティをつくっています。こういう場所があることで、家族のような存在が増え、近所付きあいもあるので、将来的には安心して子育てができると思っています。最近ではこのエリアに引っ越したいというLGBTの声を聞くこともありますね。

コミュニティについて考えるとき、やっぱりオンラインだけでなく、オフラインの関係は欠かせないと思います。同じ価値観の人で集まり、なにか一緒に行動したほうが、その後の関係性がスムーズだからです。だから、直接会ったり、同じ時間をともにすることに加えて、ネットのツールを使ったキャンペーンをして情報発信したりコミュニケーションをとることはどちらも大事だと思います。

たとえば、みんなで「PRIDE FROM JAPAN」と書かれたプラカードをつくったことがあります。私たちは先日のニューヨークでのプライド・パレードで掲げて、文野さんはベルリンのパレードで掲げて、トロントで掲げた仲間もいます。普段、カラフルステーションを中心に頻繁に顔を合わせているからこそ、メッセージツールのやりとりで素早くプラカードのメッセージやデザインについて相談することができました。なにかあればすぐ動くことができます。

人が集まる場所から新しいメディアが生まれる

この場所には、LGBTに関するいろんな冊子が置いてあります。新しいメディアと言ってもいいと思います。たとえば、神宮前にあるポット出版が発行している「神宮前二丁目新聞」は、この近所だけで配布している地域に根ざしたフリーマガジンです。制作にはこの場所を運営する認定NPO法人グッド・エイジング・エールズも参加していて、この冊子もカラフルステーションがあることで生まれています。

ほかに新しいメディアといえば、「OUT IN JAPAN」。カミングアウトしたLGBTの方々を対象としたフォトプロジェクトで、第一弾は写真家のレスリー・キーさんによる撮影です。冊子やWebで見た人も多いかもしれません。カラフルステーションでも写真展示がおこなわれました。

同性パートナーシップ証明書のリーフレットも置いてあります。これは条例が可決する前に制作されたものですが、ここに集まり、みんなで勉強したり、意見を交換したことがベースになっています。

この場所には、深くコミットする人もいれば、一見さんもいます。ここがきっかけとなって、この場所を運営するNPO法人グッド・エイジング・エールズの活動に参加する人もいますし、私とパートナーが運営するオンラインサロン「こゆひろサロン」(180名以上が参加)に参加してくださったり、メンバーがここを訪ねてくれることもあります。

カラフルステーションに置かれたさまざまなリーフレット

東京、神奈川、兵庫、大阪、沖縄---広がるLGBT支援

LGBTにとって、つながれる場所が本当に大切です。同じように、行政による多様性のあるまちづくりや社会づくりの取り組みも必要になります。渋谷を皮切りに、世田谷区でも同性カップル公認の動きがありました。東京以外でも、兵庫県宝塚市、神奈川県横浜市も同様の取り組みをおこなうようです。また、大阪市淀川区は日本初のLGBT支援宣言を出していて、区役所にレインボーフラッグが掲げられています。沖縄県那覇市もLGBT支援宣言(仮)を出しています。

今後も東京などでモデルケースができれば、徐々に地方にも波及していくと思います。ただ、地域によっては保守的な場所もあり、そういったところではまだカミングアウトもむずかしいですし、セクシュアル・マイノリティが生きづらい状態が続いています。ですが地方でも、LGBTをテーマとした映画祭やパレードが開催されたり、いろいろな地域で当事者のグループが活動していたりと、少しずつですが問題解決に向けて進んでいます。

それでも、地方ではカミングアウトするのがむずかしい。やっぱり、地元の人たちとのつながり、親、きょうだい、職場の問題・・・複合的な理由が重なります。しかし、どこにでもLGBTはいます。どのように多様な性のあり方や新しい価値観などを受け入れていくのかを考え、継続的な活動の結果、徐々に浸透していくのかなと思います。

メディア環境の変化がLGBTを後押しする

私は石川県金沢市の出身なのですが、女の子が好きだと気づいたのは女子校生のころでした。でも、地方なので、主要なメディアというと新聞やテレビ、雑誌くらいしかなくて。ちょうどインターネットが普及しはじめるくらいの段階だったと思います。それで困ったのは、LGBTに関する知識や情報がほとんど得られなかったことです。だから、本当に不安だったし、図書館の隅で本を読むしかなかった。本当にレズビアンの人っているのかなと、真剣に悩んでいたんです。

でも、現在はLGBT関連のニュースも増え、インターネットで情報を探すことができるようになりました。(性的)マイノリティの人にとって、情報を受発信することに関して、ずいぶん状況が変わったと思います。それでも、まだまだ情報や居場所は足りていません。

私は同じような人とつながれる場所がなかったという自分の経験から、オンラインサロンを立ち上げました。サロンでオフ会を開催するときには、グーグルハングアウトなどで地方と中継でつなぐようにしています。やっぱり、同じ価値観でつながれる人がいるという現実を知ることで、安心感につながると思っています。こういったコミュ二ティをつくることも、社会問題の解決に向けて非常に大切なことだと感じています。

今回、「メディア化する個人」というテーマをいただいてから、自分はメディアなのかどうか、はじめて考えるようになりました。ちょうど今朝、大学の先生をしているお友達からメッセージをいただいたんです。「ジェンダーの授業で、学生たちにディズニーでの結婚式のことを聞いたら、知っている人が多く、肯定的に捉えてくれている」とのことでした。

私たちにとってあの結婚式は2年前のことですが、いまだにだれかに伝わっているという事実はとても嬉しかったです。最近では、自分がツイッターやブログにアップロードした写真を教科書の副読本に使いたいという依頼もありました。個人が発信したものが書籍というメディアになることも、なんだかメディア化している実感にもつながりますね。

「メディアとはなにか」と聞かれるとむずかしいですが、いまではツイッターやブログ、オンラインサロンなどで、同じ価値観や問題を持っている人と横でつながることができます。このメディア環境の変化が、これからのLGBTの権利を守ることや、同性婚の実現にとって、大きな後押しとなり、いい影響を与えてくれると信じています。

LGBT=イロモノとしたメディアが、大切な社会問題として捉え直した

LGBTに限って言えば、この数年でメディア環境はとてもポジティブに変化していると感じます。たとえば、まだ2012年ごろには、テレビの影響もあり、同性愛者=オネエタレントというイメージで、笑いの対象やイロモノという扱いだったと思います。

しかし、最近では私がバラエティ番組に出演した際も、LGBTは笑いの対象ではありませんでした。芸人さんやテレビの作り手側も、ちゃんと考えていくべき社会問題のひとつなんだと認識しはじめています。これは大きな変化です。

また、この2~3年で、アメリカやイギリス、フランスで同性婚ができるようになったというニュースが日本にも少しずつ入ってきたことで、日本でもLGBTをとりまく問題が知られるようになりました。このような問題の認知を広げていくのも、メディアの大切な役割だと思います。

もっとLGBTのことが知られ、個人も企業も行政も動いていかなければいけないという雰囲気をつくっていくためには、メディアの影響は欠かせないと思います。LGBT当事者に会ったことがないと、大切な社会問題のひとつだと認知することはむずかしいです。だからこそ、マスメディアだけでなく、一人ひとりがメディアであるかのように問題を伝え、広めていかなければいけないと強く感じています。

そう考えると、LGBTに関するきちんとした情報や報道が増えるにつれて、自分ごととして考える人も増えてくるのだと思います。もちろん、私もLGBTアクティビストとして、この問題が多くの人に知られるように活動を続けていきます。日本で初めて同性パートナーシップ条例が施行された渋谷という象徴的な場所から、これからもポジティブな情報発信を心がけていきたいです。 

東小雪(ひがし・こゆき)
1985年、石川県金沢市生まれ。元タカラジェンヌ/LGBTアクティビスト。テレビ・ラジオ出演、企業研修、講演、執筆など幅広く活動中。TBS系列『私の何がイケないの?』、NHK Eテレ『ハートネットTV』、TOKYO MX『モーニングCROSS』などメディア出演多数。著書に『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』(講談社)、『レズビアン的結婚生活』『ふたりのママから、きみたちへ』(ともにパートナーの増原裕子氏との共著、イースト・プレス)。オンラインサロン「こゆひろサロン」運営。Twitter: @koyuki_higashi、Blog: 元タカラジェンヌ東小雪の「レズビアン的結婚生活」ブログ
左からサイボウズ式 編集長・藤村能光、現代ビジネス編集部・徳瑠里香、東さん、現代ビジネス編集部・佐藤慶一
編集後記
マイノリティにとって暮らしやすい社会やまちは、マジョリティにとっても暮らしやすい。そんな言葉を耳にすることがある。個人的にはそのとおりだと思うし、そのような社会に向けてじわじわと動いている人も何人か知っている。偶然にも、学生時代に現渋谷区長の長谷部健さんが立ち上げたNPOでインターンをしていたとき、「ダイバーシティ」とか「インクルーシブ」といった単語をよく聞いた。当時は遠く感じていた言葉だったが、自分の家族にも障害をもつ人がいたり、非営利メディアでライター経験を積んだりしたことで、その実像が自分にもぐっと近づいてきた。

今回の取材のなかで、ニューヨークでのパレードについて「もう、規模が大きくて本当にすごかったですよ」と、とても嬉しそうに話してくれた東さん。印象的でした。改めて、誰に任せるでもなく(お互いに頼りながらも)、一人ひとりがメディアとして、多様性やお互いの価値を認め合う社会づくりを実現していかなければいけないと感じた(佐藤慶一)。

おわり。