[プロ野球]
上田哲之「山田哲人から見えてくるもの」

〔photo〕Wikipediaより

四冠も狙える打撃の秘密

 まれに見る大混戦が続くセ・リーグにあって、抜け出すとしたら、どのチームだろうか。大勢が見え始めるのはおそらく8月末あたりだろうけれど、8月上旬の現時点で、多くの評論家が注目するのが、東京ヤクルトである。

 セ・リーグの混戦の原因は、どのチームにも他チームを圧倒的に引き離すほどの力がないことにある。わかりやすく言えば、6球団ともに弱い。どんぐりの背くらべ状態である。

 その点、ここへきてヤクルト打線の爆発力には目を見はるものがある。その圧倒的な打撃力で、最終的には抜け出すのではないか、というわけだ。たしかに、9回にいっきょ11点を奪うほどの爆発力はすさまじい。

 その猛打ヤクルトの象徴的存在が、山田哲人である。履正社高出身の5年目、23歳。昨年、最多安打のタイトルを獲得してブレイクしたけれども、今年はホームランでもリーグトップを快走するなど、さらスケール・アップした。三冠王+盗塁王で四冠を視野に入れ、そのうえ「3割、30本塁打、30盗塁」のトリプルスリーを達成する可能性も十分にある。

 前回とりあげた柳田悠岐(福岡ソフトバンク)、秋山翔吾(埼玉西武)とともに、いまや、日本野球を代表する強打者に成長した。山田もまた足を大きく上げて、ステップして打つ打者である。左右の違いはあるが、どちらかというと、秋山の右足の上げ方と似ているのかもしれない。

 投手のモーションに合わせて、まず左ヒザをまっすぐ持ち上げるようにして、そのトップの位置から、何かを蹴るようにいったん足首を体の前方へ振ってから、投手側へ着地させる。この「前へ蹴り上げる」ような動きが、独特の間を生んでいる。

 前回、秋山のステップは柳田と比べると、一拍分、間が多いと書いたが、それと同じような一拍分の動きが、山田のステップにもある。ただし、重要なのは、その大きく足を上げてステップする間、上体はステップする前の位置に、ピタリと止まっているという点だろう。上体がブレないから、速球も変化球も強く振ることができる。

 実際、本人も「待ち方がいい。直球待ちで変化球が来ても、前に突っ込まずに打てている」(「日刊スポーツ」7月30日付)と自己分析している。「(好調の原因は)しっかり右足に体重が乗っているので」とテレビ取材に答えている場面もあった。つまり、足を大きく上げる場合、軸足の側に体重が乗って、体が前に出ていかないことが肝要なのである。