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 城南信用金庫がまたまたやってくれた。同金庫は、東京・品川に本店を置く大手信金で、横並び意識の強い金融界の中でこれまでも懸賞金付き定期など様々な斬新な商品を作り出してきた。今回は東電の原発事故を契機に、脱原発キャンペーンを打ち出したのだ。

 どんな中身なのか。まずそのメッセージは「原子力エネルギーに依存することはあまりにも危険性が大き過ぎるということを学びました」としたうえで、自ら省エネルギーを推進するとしている。具体的には、1.徹底した節電運動の実施、2.冷暖房の設定温度の見直し、3.省電力型設備の導入等となっており、はっきり言えば普通の企業で行われている省エネばかりだ。

 それなのに、ネット社会を中心として絶賛の声があがっているのは、お堅い金融機関がいち早く「脱原発」を打ち出したことと、金融業界のタブーに挑戦したと評価されているからだろう。

 原発事故の補償問題に関して政府がまとめようとしている策は、東電を温存して東電に巨額のカネを貸し込んでいる大手金融機関も守るという構図になっている。金融機関に負担を被せないということは、その分だけ国民負担が電気料金引き上げなどの形で増えることを意味する。しかも、東電救済のための電気料金引き上げが、東電以外の九電力会社でも行われる見込みだ。そんな東電救済に国民は怒っている。

 一方、東電をはじめとする電力会社は国民から電気料金を徴収するためにも、原発の新規増設こそしないが、福島原発以外の既存原発は稼働しなければいけない。金融業界は金融業界で、電気料金の引き上げによって大手金融機関が救われるのを知っている。だから、金融業界は脱原発を言いにくいのだ。

 しかし、城南信金はそんな大手金融機関への配慮などお構いなし。これはイメージ戦略として他の金融機関との差別化になって、きわめて賢い方法だ。

 メッセージでは「金融を通じて地域の皆様の省電力、省エネルギーのための設備投資を積極的に支援、推進してまいります」と宣言し、それに沿って本業の金融業務では、1.節電プレミアム預金(100万円まで1年間の利息を通常の0・08%から1%に上乗せ)、2.節電プレミアムローン(50万円以上300万円以内で当初1年間は金利ゼロ。2年目以降は固定1%)などを打ち出した。一定額以上の省エネ設備投資をした個人を対象にしたサービスで、商品としての魅力は抜群とは言い難いが、企業イメージのアップには大きく貢献するだろう。

 城南信金はしたたかな金融機関だ。総資産量は約3兆6000億円と地銀の中位行以上の規模で実力は銀行ながら、あえて信金のままでいる。銀行の法人税は原則30%だが、信金だと22%の軽減税率が適用されるからだ。見栄を張らずに、実利を得ているのだ。

 城南信金の理事長・吉原毅氏は、昨年11月の定例理事会で副理事長から昇格した。実力者で前相談役の真壁実氏と真壁氏の娘婿で前理事長の深澤浩二氏を解任するというクーデターで、ドラマチックに理事長の座を手にしたのだ。両氏の独裁政治で私物化や公私混同が激しかったと言われているが、はたして脱原発で企業イメージの一新ができるだろうか。

 また、城南信金の貸出金残高は4期連続マイナスになっている。こちらも、脱原発の融資の取り組みによって反転させることができるかどうか、チャレンジの行方が気になるところだ。

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