新白河原人08 整地2 泥沼
〜雨の時は整地作業しちゃダメ

【特別公開】守村大『新白河原人 遊んで暮らす究極DIY生活』

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整地2  泥沼

無残と言ってもいい夏だったなあ。

私が整地に挑んだその年の夏は、いわゆる冷夏。長い梅雨の後、暦の上で盛夏になっても、恨めしい雨天に呪われていた。

私は気力を奮い立たせ、情熱とか、夢とか、欲とか、そんな気体のような情念に取りすがり、ひとり整地作業に励んでいる。漫画屋には全く未知の、そして無知といえる所業の連続、つまりは素人仕事。

好天であったとしても、そのふるまいは無様で痛ましい。ましてや雨天である。切り崩した土は水を吸いドッシリと重たくなり、足下の土は、ユンボが動き回る度にコネられてヌチャヌチャの泥と化す。

ひたむきに作業に励んでいるのだがとても工事にはみえない。ていうか、むしろとんでもないことになっている。

励む程に現場にはチョコレートを煮たような泥沼が着々と造成されていく。ユンボのキャタピラーは無用に泥を掻き回すばかりで、そのうちに身動きがとれなくなった。まさしく泥沼にはまり込んだ状態。車体が泥の中にして、あがくほどに、もがくほどに、ズブと泥に沈む。

ああ、じれったい、言葉が足りない。

つまり、ぬっちゃぬちゃのぐちょぐちょ、めたもたのごたぐた、げばげぼのげっちょげちょ、スカー、プスプス。

“スカー”は、へこたれて情熱がガス漏れした私の心情を表象している。“プスプス”はあきらめてユンボのエンジンを切った音。

もはやこれまでと、運転席から現場に降り立つと、ヌップと両足が泥に潜り、あちゃちゃ、勢い余ってそのまんま泥沼にダイブ。そんな五十男のいたわしい夏。

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守村 大(もりむら・しん)
1958年生まれの漫画家。モーニング(講談社)にて連載された『万歳ハイウェイ』『あいしてる』『考える犬』など、代表作多数。現在東北新幹線・新白河駅から車で10分の里山で開墾生活をしながら、モーニングにて『新白河原人』の漫画版『ウーパ』を連載中。

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講談社 定価:1,500円(税別)

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