新白河原人07 整地1
〜私はどれだけの土地が必要か

【特別公開】守村大『新白河原人 遊んで暮らす究極DIY生活』

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整地1 私はどれだけの土地が必要か

伐採・抜根した林内に立ち、この先の展望を脳裏に描いている。見渡し一面緩やかな傾斜地が続き平地は見当たらない。畑なら斜面でも営めるものの、日常生活はキツいよな、せめて居住区の主立つ所ぐらいは平らかに造成して快適に暮らしたい。

整地・造成などはおよそ漫画屋の為すふるまいとは思えないが、自力がお山における私の行動原理になっている。当然、作業は自家用ユンボ“鉄人君”を用いて、私一人で励行する。

整地した区域がこの山の私の勢力範囲といえる。トルストイの『人間にはたくさんの土地が必要か』という寓話が卒然と頭をよぎる。自分の歩いた土地をもらえると聞いた勤勉な農夫が欲張りすぎて頓死、手にしたのは墓穴分の土地のみという悲劇。果たして、私にはいったいどれだけの土地が必要か、て真剣に考えてしまう。

建設を考えている小屋は材料、経費および技術的都合にて、敷地面積10坪程のこぢんまりした丸太小屋。ああ、なんてひかえめな私でしょう。まてよ、煮炊きするカマド小屋を併設するんだった、あ、それと薪小屋も。と、少々用地が広がる。

露天風呂は男として外せないよなあと我がままな五十男は、この際サウナも計画に入れとこうと増長する。

おっと、トイレを屋外に設置するつもりだった。そうだ、今でこそ山中埋伏しておるが、社会復帰を考えると仕事場を考慮せねばならんぞね。

おわっ、卵タマゴ、鶏小屋は欠かせないぜ。だんだん意地汚くなって計画は漸次自己肥大する。

丸太小屋の製作現場自体が材料の原木置き場と広い作業スペースを要することもあり、10坪を根本とする私の勢力範囲は300坪にならんとしている。

これは私の夢のカタチか、それとも欲のカタチか。墓穴は掘りたくないものじゃ。

(つづく)

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守村 大(もりむら・しん)
1958年生まれの漫画家。モーニング(講談社)にて連載された『万歳ハイウェイ』『あいしてる』『考える犬』など、代表作多数。現在東北新幹線・新白河駅から車で10分の里山で開墾生活をしながら、モーニングにて『新白河原人』の漫画版『ウーパ』を連載中。

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講談社 定価:1,500円(税別)

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