安保問題に隠れて、「原子力ムラ」が水面下で利権拡大に励んでいる
九州電力川内原発〔PHOTO〕gettyimages

安保の裏で利権拡大

安保法案や国立競技場をめぐる報道ばかりが目に付くが、こういう時は、官僚、族議員と関連業界が、陰で利権拡大に励んでいるのが普通だ。その典型が、原子力ムラの動きである。

九州電力川内原発再稼動に先立ち、大手電力会社の利権を温存するために至れり尽くせりの電気事業法改正案が国会で成立。また、四国電力伊方原発の規制基準適合審査も終わって、冬にも再稼動という段取りだ。さらに今、「核燃料サイクル」と呼ばれる巨大ゾンビプロジェクトの完全復活計画が、着々と進んでいる。

「核燃料サイクル」とは、原発から出る使用済み核燃料からウラン、プルトニウムなどの資源を取り出して再利用するものだ。大手電力9社が大半の出資をする「日本原燃株式会社」が実施主体となり、再処理に必要な費用は、大手電力会社が社外(原子力環境整備促進・資金管理センター)に積み立てている。

しかし、この計画はほとんど破綻している。再処理工場の完成時期は遅れに遅れ、昨年、'14年10月の完成予定を'16年3月へ1年半延期すると発表したが、何とそれが22回目の延期だった。当初、6900億円と言われた建設費も2兆2000億円と3倍超となり、総事業費もうなぎのぼりで19兆円にも上ることが明らかにされているが、これがさらに膨れ上がることは、これまでの経緯や国立競技場問題などを見ても明らかだ。

しかも、今、かなりの原発の再稼動が困難になっている。稼動する原発が減れば、使用済み核燃料の発生量が減って、再処理工場の稼動率は大きく下がり、採算は大幅に悪化する。

'16年からは、電力小売が自由化され、再処理計画のコストを負担する大手電力会社は、競争上不利になる。経営が苦しくなれば、このプロジェクトは頓挫し、大手電力会社の日本原燃に対する巨額の出資も焦げ付く。原子力ムラから見れば由々しき事態である。

そこで、経済産業省は、日本原燃を株式会社ではなく、国が直接人事や予算などに口出しできる特別認可法人にしてしまおうと考えている。表面上は「国の関与を強める」というが、要するに、経産省の支配力を強めた上で、税金を再処理計画に投入し、あるいは、そのコストを電力料金に上乗せさせて、電力会社を助ける魂胆だ。もちろん、新認可法人には複数の経産省の天下りを送り込むことができる。

しかし、これは非常におかしな話だ。何故なら、原発は、「安全で安い」という話だったはずだ。ならば、再処理のコストを電力会社が負担しても、経営上問題になるはずがない。

今回、電力会社や経産省が、電力会社の経営が大変だと言うのであれば、それは、原発は高くて競争できませんという意味である。それなら、原発などいらないではないか。原発は安いから必要だと言って、原発維持を決め、いったんそう決まると、原発維持のためには税金か電力料金で再処理コストを出せと居直る。何と勝手な論理だろう。

猛暑の中、全国で、日本の将来を憂えて安保法案反対の声を上げる市民。そして、涼しい部屋で、着々と利権拡大に励む官僚たち。あまりに理不尽な構図ではないか。

 『週刊現代』2015年8月15日・22日合併号より

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