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【二宮清純レポート】ノーコンピッチャーから打者転向で開眼! 雄平(ヤクルト)「一度死んだ男」の意地
〔photo〕Wikipediaより

投手として成功しなかったのは、努力が足りなかったからではない。まじめ過ぎたがゆえに悩み、雄平はフォームを見失った。もう投手に未練はない。31歳の「小さな大打者」が覚悟を明かす。

黒田から放った大本塁打

野手転向6年目にして開幕4番を任された。春の欧州代表戦では初の「侍ジャパン」入りを果たした。

30代に入って一流の仲間入りを果たした東京ヤクルトの外野手・雄平(高井雄平)の再チャレンジ人生から、サラリーマンが学ぶべき点は少なくない。

会社員にたとえて言えば、新卒で入社し、最初に配属されたのは花形部署。しかし、期待に応えることができず、別の部署へ異動に。そこで眠っていた能力が開花し、大変身を遂げるのだから、人生はわからない。

もっと早く転向すれば良かったのか。それとも不遇の時代が彼を強くしたのか。

今季のプロ野球、前半戦を盛り上げたのは広島の黒田博樹だった。メジャーリーグ通算79勝の右腕は20億円とも言われるメジャー球団の提示年俸を蹴って古巣へ8年ぶりに復帰した。

広島を中心に黒田グッズは飛ぶように売れ、彼が先発した本拠地での試合は軒並み満員となった。

その黒田に日本球界復帰後2つ目の黒星をつけたのが、5月1日のヤクルトである。雄平は4点リードの3回、1死走者なしから黒田のフォークボールをライトスタンド中段へ運んだ。結果的にこれが決勝点となり、5対4でヤクルトが勝った。

「あれはうれしかった。最高にうれしかった」

子どものように顔を上気させながら雄平は振り返る。

「黒田さんは、とにかくカッコいいんです。マウンドに上がっている姿を見ているだけですごさを感じる。とても40歳のボールとは思えない。真っすぐに力があって、変化球もすごく曲がる。それを打てたんですから……」

しかし、今季の雄平は波に乗り切れない。7月23日現在、打率は規定打席に達しているバッターの中では下から4番目の2割4分5厘。〝2年目のジンクス〟なのか。

昨季、キャリアハイとなる打率3割1分6厘、23本塁打、90打点をマークした。あの驚異的な打棒は、まだ鳴りを潜めたままだ。

幸い、雄平には挽回のチャンスが残されている。今季のセ・リーグは首位から最下位までが4ゲーム差でひしめき合う大混戦。0強6弱の状態だ。雄平のバットがチームの浮沈のカギを握っていると言っても過言ではない。