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フランスの不満は暴発寸前!?
なぜ「ドイツ帝国」はEUで一人勝ちできたか

ベルリンの壁崩壊25周年を祝うイベント時のライトアップ〔PHOTO〕gettyimages

EUはおしなべてドイツの支配下に入っている

エマニュエル・トッドの『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』という本が売れている。センセーショナルなタイトルだが、その分析には、「そうそう、その通り!」と思うところが多い。私の場合、ドイツに住み、ドイツ人の家族がいるため、ドイツ批判には心なしかブレーキがかかるのだが、トッド氏はフランス人、しかもユダヤ人なので、何の遠慮もなく、実に辛辣だ。

トッド氏は、めきめきと力をつけてきたドイツの現状を分析し、その原因を探り、これから先もさらに強くなるだろうと予言している。そして、強くなった原因として、次のようなことを言っている。

「最近のドイツのパワーは、かつて共産主義国だった国々の住民を資本主義の中の労働力とすることによって形成された」

「共産圏諸国が崩壊後に残したのは、時代遅れになった産業システムだけではなく、教育レベルの高い住民たちでもあった」

「ドイツはロシアに取って代わって東ヨーロッパを支配する国となった」

つまり、ドイツがEUの経済大国として君臨しているのは、東欧の安くて良質な労働力で、低価格で競争力のある製品を作れるから、ということだ。

トッド氏の分析によれば、ベネルクス三国、オーストリア、チェコ、スロベニア、クロアチアは、すでにドイツの経済システムに組み込まれている。加えて、そのドイツ経済圏に自主的に隷属してしまったのが彼の母国フランス。いくらフランスといえども、同じユーロを使っている限り、ドイツに対する競争力など永久に取り戻せない。

また、ロシア嫌いの衛星国ポーランド、スウェーデン、フィンランド、バルト三国は、ロシアを恐れるあまり、放っておいてもドイツ側に寄る。つまり、独立独歩のイギリスとハンガリーを除けば、すでにEUはおしなべてドイツの支配下に入ってしまった、という見方だ。まさに本のタイトル通り「ドイツ帝国」。