経済の死角

地方発
ニッポンを元気にする「小さな会社」

このまま負け続けたら、国がなくなる

2010年05月01日(土) 週刊現代
週刊現代
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 オバマ大統領夫人によって一躍その存在が世間に知られるようになった小さな紡績糸メーカーが日本にある。山形県寒河江市にある佐藤繊維。従業員100名の会社だが、昨年1月のオバマ大統領の就任式でミシェル夫人が着ていた高級ブランド製カーディガンに使われていたニット糸が同社の製品であった。

 なぜ地方の小企業が手がけるニット糸が、世界的ブランドの認めるところとなったのか。

 佐藤繊維は、現社長の佐藤正樹氏の曾祖父が1932年に設立した会社で、佐藤氏が社長に就任したときは、下請けで安価な糸ばかりを手がけていた。

「このままでは将来はないと思ったんです。そこで、うちでしか作れない製品を目指すことにした。それしか生きる道はなかったというのが本当のところです」(佐藤社長)

 こうして製品化にこぎつけたのが、南アフリカ産の希少なモヘアを原料にした細い特殊な糸だった。

 従来、世界で最も細いモヘア糸は1gで20m。それを佐藤繊維は1g52mという極細のモヘア糸の製品化に成功したのだ。世界的なブランドがこれに目をつけ、特殊なニット糸によって、これまでにない光沢と繊細な風合いをもったカーディガンが生まれることになった。

 佐藤繊維は9年前から、紡績のみならず、オリジナルのニットブランドをニューヨークで展開している。

「かつては、いいものを安く作ればいいと考えていましたが、今はそれだけでは駄目だと思っています。いいものを作って、お客さんに喜んで買っていただくためには、自社ブランドの価値を上げる努力をしなければいけません」(佐藤社長)

 その結果、同社のニット部門はこの10年間年率5%程度で成長を続け、今年も過去最高の売り上げになる見通しだ。

 沈みゆく日本経済と大企業。一方で卓越した技術力を背景に、海外で活躍する中小企業はたくさんある。

 広島県安芸郡熊野町。周囲を山に囲まれたこの小さな町は、筆の産地として有名だ。伝統産業といっても、現代社会に筆の需要など高が知れている。だが、意外にも産地は近年、活況を呈しているという。

 地場産業を救ったのは、化粧筆への転身だった。熊野町で作られる高級化粧筆は、いまや国内はもちろんアジア、欧米、さらにはハリウッドの女優にも愛用されているのである。

 この町で月産50万本の化粧筆を生産している白鳳堂は、このところ業績好調。今期の売上高も前年比21%増を見込んでいる。同社の髙本和男社長によると、

「やはりコストがかかっても、いいものを作っているから売り上げが伸びていると思っています。安い中国製品に対抗して、より安い製品を目指す業者もありますが、これは逆です。いったん価格競争を始めると、さらに安いライバルが現れたときに太刀打ちできなくなってしまいます」

 筆づくりは機械化が難しく、いまも職人の手仕事によるところが大きい。高級化粧筆ならばこそ、伝統製法を守ることが大切だというのだ。

「つい売り上げを確保したいという誘惑にかられますが、それは絶対に駄目です。利益優先に走ってしまうと、品質維持は難しくなる。一度、落ちた技術を再び元に戻すのは容易ではありません」(髙本社長)

死に物狂いになれば

 ところで、日本の中小企業が得意とする技術の一つに金型(かながた)製作があるが、この分野で優れた実績をもつ三重県四日市市の伊藤製作所は、もう10年以上前に海外進出を果たしている。

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