なんとなくでVCから資金調達は絶対にしちゃダメ!
[イラスト] iStock

(TEXT 高宮慎一)

僕は、スタートアップの成長を支援する、ベンチャーキャピタル(VC)というオシゴトをしています。スタートアップに投資をして資金を供給し、投資した後は社外役員の形などで経営面もがっつり支援しています。

(誤解を恐れずに言うと)

よくスタートアップに投資する前にあえてネガティブな言い方をして、「VCからのファイナンスは、“悪魔との契約”だ」と言って、“経営者の腹落ち度”を確認したりします。

イメージは人気コミック『ARMS』のあのシーン…

「力が欲しいか?」

です。

”悪魔との契約”の意味

どういうことかと言うと、VCからの資金調達は、現在のステージの身の丈に合わない大型の資金がどうしても欲しいとき、資金面以外でも経験豊富なアドバイザーに参画して欲しいときの、奥の手、ニトロ注入みたいなものだと思うんです。そういう意味で言うと、数多くあるファイナンスの手法の中でも、特殊なケースにのみうまくハマる、非常にイレギュラーなものと言うこともできます。なので、VCからファイナンスできることが良い事業の定義ではないし、VCからファイナンスできない、すべきでない、良い事業なんて山ほどあると思っています。

VCからの調達を考えるようなステージのスタートアップだと、通常売上、利益はまだまだ立ち上がっていなくて、銀行からのデット(貸付)はつかない、かと言ってオーガニックな(事業で稼ぐ)キャッシュフローだと、ちょぼちょぼ過ぎて事業に投資するスピードが全然あがらない。でも、市場が大きくてめちゃ成長してとか、競争が激しくってスピードを持って面を押さえないと競合にやられるみたいなときに使う奥の手なんだと思うんですよね。

一方で、起業家は失うものもあり、VCというビジネスは、「そもそもそういう仕組だ、仕方がない」というレベルで、お金を入れる代わりに株式、いわばその会社の“カラダの一部”をもらいます。(この辺りはこちら『ベンチャーのExit戦略については、起業家は最初から理解しておいたほうがいいかも』

VCも、ファンドを作るにあたり背後にいる投資家のお金をお預かりしていて、ファンド満期時(通常10年程度)にそれにリターンをつけてお返ししなきゃいけないんです。だから、投資先のスタートアップを株主として、社外役員/アドバイザーとしてがっつりサポートしますが、いつかは“Exit”(※)をすることが必須になります。

※株主が、株式を売却する機会という意味で“Exit = 出口”という言葉が使われています。通常だと、上場やM&Aなどがそれにあたります。でも、あくまでも、“Exit”って、株主目線の言葉で、会社にとっては手段となるイベントなので、僕はあまり“Exit”という言葉が好きじゃないんですが…。

つまり、いつかは“カラダの一部”を持って、いなくなる存在なのです。

また、VCからのお金を受け入れるということは、VCがVCの背後にいる投資家に期待されているリターン(「ファンド全体で10年で何倍だから、このステージで投資した会社は何倍を目指す」みたいなこと)を出すことに、コミットすることを意味するんですね。ここは起業家にとって非常に大きな決断で、なんとなくでVCからお金を引くべきでは絶対になく、意識的、戦略的にするべきことなんですね。

逆に、VCとしても、この辺りをちゃんと起業家に説明して、納得してもらった上でなきゃ投資してはいけないと思っています。そして、起業家も納得してVCから調達を決めたからには、本気で約束を守るべく頑張らざるを得ない…(もちろんそれでも結果が伴わないケースはあり、結果としてそうなるのは仕方がないと思いますが、それでも精神論として約束は絶対に守る!ということになってしまいます)。

その辺りの認識が、起業家と投資家で合っていないと、いざExitというときにおおいに揉める可能性があります。なので、投資する前段階で、資本政策は不可逆だからこそ、お互いにすべてをさらけ出したうえで、きっちり、認識、期待値をすり合わせることが、本当に大事だと思うのです。

なので、僕はあえて「悪魔に体の一部を渡して、力を得る」というネガティブな言い方をして、ちょっとひっかけっぽいんですが、それでも大きな機会をモノにしたいですか? 競争に勝ちたいですか? と、経営者の腹落ち度を確認するようにしています。

「悪魔」というとネガティブなイメージになってしまいなんなんですが、僕らVCからしても、逆に起業家に約束をしています。「契約するからには、最強の悪魔になります、悪魔同士の戦いなら負けません!」と。ひねくれずにストレートに言うと「僕たちVCも会社の成長に貢献するよう死ぬ気でがんばります、同じ船に乗って一緒にやりましょう、だから僕たちを選んでください!」ということなんです。

なんやかんやで、誰からお金を調達するのかを選ぶのは起業家です。VCが勝手に投資したいスタートアップを選んで投資できるのでなく、起業家に選んでもらってはじめて、投資できるわけですから。

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