国家・民族 中国
中国共産党に"征服"された新疆ウイグルは、理解し難い二重社会だった
【新疆ウイグル見聞記・後編】

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新疆ウイグル自治区の天池とカザフ族

3日目は、朝から「天池」へ向かった。天池とは、雪山が解けて山間に池をなすことだ。池と言っても、それはあくまでも中国的感覚であって、日本で言うなら湖だ。

中国には有名な天池が2ヵ所ある。一つは、中朝国境沿いにある長白山(白頭山)の天池だ。私はそこを一度訪れたことがあるが、正直言って、たいして感銘を受けなかった。

もう一ヵ所が、新疆ウイグル自治区にある天池だ。ウルムチ市から北東に110㎞行った阜康市郊外にある。周囲を取り巻く天山山脈の5000m級の山間地帯にあり、海抜1910m。南北3400m、東西1500mの大池である。約300万年前に、いまの形になったという。

何より興味をそそられたのが、その辺りがカザフ族の集落であることだった。新疆ウイグル自治区と言えば、もちろんウイグル族がメインだが、自治区には47もの民族が共生している。その中で、カザフスタンを本拠地とするカザフ族も約150万人いて、彼らの生活ぶりを視察したかったのだ。

二日前から一緒に行動を共にしている50代の運転手が、朝ホテルに迎えに来てくれて、前日とは反対の方向、すなわち北方へ向かった。途中、人民路の目抜き通りで朝の渋滞に巻き込まれ、車はかなり減速して走っていた。その時突然、左手でドカーンという轟音がこだました。

「爆破テロだろうか?」

私は思わず声を上げた。すると、普段は世界の何事にも無関心に見える運転手も、緊張した顔つきになって、轟音の鳴った方角に目を凝らした。 

「いや、単なる自動車事故ではないか」

「すぐに近くまで行ってほしい」

近くで見ると、何と公安(警察)車両がスピードを出しすぎて、一般車に激突したのだった。公安車両はペシャンコになっていたが、何ともバツの悪い交通事故だ。ウルムチ市民にどう釈明するのだろう? 日本なら、警察署長がお詫び会見を開くことだろう。だがこちらの公安は、ウルムチの共産党宣伝部を通して、地元の全メディアに報道規制をかけ、事故などなかったように装うに違いない(実際、このニュースは流れなかった)。

ウルムチの北東側の道なりも、前日走った南側と同様、緑のない殺伐とした荒野が広がっていた。その中に、火力発電所が点在している。市の南側は風力発電で、北側は火力発電なのも興味深い。これは私の推測にすぎないが、南側にはテロのリスクがあって、火力発電所を置けないのではなかろうか。

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