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両親が明かした芥川賞芸人「又吉直樹」という男
泣いて、笑える!貧乏だった少年時代、恥ずかしがり屋だけどお調子者

お笑い芸人に話題作りで賞を与えて、と批判する人もいる。でも一方で「又吉は本物」と評する人も多い。芸人らしからぬ「静かな男」は、一体どんな半生を送ってきたのか。両親、恩師が語る素顔。

玩具のない家で育った

「周りの方は『すごいね』と祝福してくださるのですが、親としてはこれからが大変だなと思っています。心配のほうが強いですね。もともとあの子は人見知りで、華やかなことがあまり似合わない子ですから……」

こう語るのは、お笑い芸人「ピース」又吉直樹の母親、みよ子さんだ。又吉は、敬愛する太宰治も取れなかった芥川賞を受賞し、一躍時の人となった。受賞作の処女小説『火花』は124万部を突破し、まだ売れ続けている。

芸人としては爆発的に売れているわけではなかったが、「ピース」の名の通り、少し心が和むコントを得意としている。不思議な雰囲気を醸す、この又吉という男は何者なのか。両親の証言を元に、その素顔を探っていく。

又吉の父・己敏さんが語る。

「『火花』は一応読んでるんやけど、普段は本なんかほとんど読まへんから、難しくて実はまだ途中までしか読めてないんです」

又吉は大阪府寝屋川市に生まれ、姉2人の5人家族で育った。当時は四軒長屋の文化住宅で、部屋は2人の姉と同室だった。

小さい頃の又吉は、恥ずかしがり屋の一方で、お調子者の一面も持っていたという。

こんなエピソードがある。又吉が6歳のころ、父親の出身地である沖縄に遊びに行った。親戚の宴会で父が三線に合わせてエイサーを踊り、場が大いに盛り上がった。すると誰かが「直樹、お前も踊れ」と言って、又吉を輪に誘い入れた。おどける又吉に、周囲は大いに盛り上がった。当然、又吉は父に褒められると思ったが、返って来たのは予想外の言葉だった。

「お前、あんまり調子のんなよ」

そう言って父は又吉を叱ったのである。己敏さんが振り返る。

「お酒を飲んでいたので、はっきりとは覚えてないけど、ちょっと悔しかったんでしょうね。自分としては別に叱ったつもりはなかったんやけどな」

この出来事について又吉は「調子にのると怒られること、大人も子供と一緒で嫉妬する生き物なんだと知った。親父からは自意識の在り方をずいぶん変えられてしまった」と後に語っている。

火花』の主人公であるお笑い芸人の徳永は、又吉本人がモデルだ。小説の中には、先輩芸人の神谷に「お前の家、めっちゃ貧乏そうやな」と言われるくだりがでてくる。それに対して徳永はこう語っている。