現代新書
商店街はいま必要なのか 
〜「日本型流通」の百年史から考えてみよう

【プロローグ公開】満薗勇=著『商店街はいま必要なのか』
〔photo〕Getty Images

「安くて便利で消費者のため」のその先は? 百貨店、地方と都会、戦前の通販の黄金時代、商店街と地域、スーパーと消費者革命、家族経営が基本の日本型コンビニの誕生と進化。1900年代から現代まで、日本人の買い物の歴史から考える。満薗勇=著『商店街はいま必要なのか』(講談社現代新書、2015年7月刊)のプロローグを公開します。


プロローグ

商店街をどう見るか

「商店街はいま必要なのか」というこの本のタイトルから、どのような内容を期待されるでしょうか? 商店街をよく利用する方なら、「商店街は必要に決まってるじゃないか」と思われるかもしれませんし、商店街でふだんあまり買い物をしていない方なら、「商店街がどうしても必要だとまでは言えないな」と思われるかもしれません。

 どちらにしても、本書を手に取った多くの方の関心は、「この著者は、商店街を必要だと思っているのか、YESなのか、NOなのか、どっちなんだ?」というところに向けられていることと思います。

 実は、本書はもともと「『日本型流通』の近現代史」という仮タイトルで書き進めたものでした。元のタイトルからは、日本流通の歴史を概説したものというイメージが強いでしょう。しかし、出揃った原稿を読んだ編集者から、「これは単なる歴史の概説書というよりも、流通の『いま』に対する筆者の問題意識が強くにじみ出た本になっているから、その問題意識を前面に出したタイトルにするべきだ」と提案され、紆余曲折を経て、今のタイトルに決まりました。

 私は歴史学を専攻し、日本の近現代史を勉強してきました。特に、第二次世界大戦よりも前の時代を対象として、通信販売や割賦販売の歴史を通して、「日本はどのように『豊かな社会』を実現してきたのだろうか?」という問題を中心に研究してきました。そうした問題を追究するうちに、「日本の流通を考えるうえでは、商店街をどう理解するかが最も重要なポイントだ」という考えに至りました。

 一方で、「豊かな社会」を実現した戦後の歴史を詳しく見れば見るほど、商店街を中心に「豊かな社会」を実現しようとしてきた時代と、経済的には「豊かな社会」をすっかり実現したかに見える「いま」の時代とが、どこか大きなところで、ずいぶんと異なる姿を見せているようにも感じられました。商店街の発展を支えてきたような社会のあり方が、どこか根本的なところで大きく変わってきたのではないか。「商店街はいま必要なのか」というタイトルは、このような歴史の側から見た問題意識を表現したものとなっています。

 では、商店街がなぜ、どのような意味で、日本の流通や社会のあり方を考えるポイントとなるのでしょうか? あるいは、もともとの仮タイトルで、サブタイトルになった「日本型流通」とはどのようなものなのでしょうか? もう少し、これらの疑問を解きほぐしていくことにしましょう。

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