【リレー読書日記・熊谷達也】
サイクルロードレースの奥深さにハマる3冊!

〔photo〕Getty Images

このところ睡眠不足が続いている。というのも、世界最大のサイクルロードレース「ツール・ド・フランス」が7月4日からスタートして、3週間に及ぶレースを毎晩テレビ中継で観戦しているからだ。

朝型の仕事サイクルのため普段は就寝時刻が早い。結果、いつもより2時間は睡眠時間が減っている。もちろん録画はしているのだが、地球の裏側で今この瞬間に、世界最強のアスリートたちがペダルを踏んでいて、それをライブで見ているのだという魅力と満足感は大きい。で、録画した番組を翌日、仕事中のBGM(映像なのだけど)代わりにしているのだから、サイクルロードレースへの嵌まりぶりには、我ながら呆れてしまう。

『偽りのサイクル 堕ちた英雄ランス・アームストロング』 ジュリエット・マカー著 児島修訳 洋泉社/2400円

ところで、このコラムの最初の回でサイクルロードレース界のドーピング問題を取り上げた本(『シークレット・レース ツール・ド・フランスの知られざる内幕』)を紹介したが、その本において影の主人公でもあったアメリカの自転車選手、ランス・アームストロングについて、綿密な取材を重ねて書かれた本が『偽りのサイクル』である。

1999年から2005年まで、ツール・ド・フランス七連覇という前人未到の偉業を成し遂げたランス・アームストロングが、自身のドーピングをテレビ番組で告白したのは、全てのタイトルが剥奪された翌年、2013年1月のことだが、本書はその翌年、2014年に出版されている。

書き手は、以前よりアームストロングのドーピング疑惑を追いかけていたニューヨーク・タイムズ紙のスポーツ記者である。2013年の初夏に行われた著者による本人へのインタビューの様子から始まる本書は、極めて冷静で公正なものになっている。この問題に関する現時点での最も信頼できる一冊と言ってよいだろう。

そして本書を手にしながら同時に考えさせられたのは、ジャーナリズムとは何だろう、という大問題だ。本書の著者のようなジャーナリストが、この国(日本)にはどれだけいるのだろう……。

ドーピング問題とダブるもの

アームストロングが活躍していた時代と比べればはるかにクリーンになっていると思われる(残念ながらドーピングの根絶までには至っていないようだが)サイクルロードレースの世界を、現役の選手がその内側から描いた貴重な一冊が、土井雪広著『敗北のない競技 僕の見たサイクルロードレース』だ。

2005年からヨーロッパを主戦場としてレースに参戦してきた著者は、2011年と12年に、ツール・ド・フランスのスペイン版とも言える「ブエルタ・ア・エスパーニャ」を2年連続で完走しており(出場できるだけでも凄いことで、完走するのはなお一層凄いのだと、ここではあえて注釈をつけておく)、現在は元F1ドライバーの片山右京氏が監督の「チーム右京」でキャプテンを務める現役バリバリの選手だ。そういえば、先日行われた全日本自転車競技選手権大会ロードレースでもいい仕事(走り)をして、チームメイトの優勝に貢献、いや、優勝のお膳立てをしていたのはさすがだ。

その彼が体験したサイクルロードレースの内側が、え? こんなことまで書いちゃっていいの? というくらい克明に、赤裸々に、そして正直に描かれている。