宝塚史100年でたった一人のレズビアン。全米の「同性婚合法化」、ニューヨークで祝福の嵐を見た

2015.8.18 TUE

2015年6月26日。金曜日。全米が祝福に沸いた。

6色の虹に染まる街。あのホワイトハウスまでもがレインボー。日本に住んでいても、ツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどオンライン上で多くのレインボーが見られた。 

アメリカ連邦最高裁判所がすべての州で同性婚を合憲とした判決を出したからだ。いわゆるLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなどの性的マイノリティ)に関して、アメリカではリベラルなメディアが積極的に報道を続けてきた。

メディアが変わると、社会が変わるのか。社会が変わると、メディアが変わるのか――そんな大きな問いを考えるとともに、日本の現状についても目を向けてみたい。日本における象徴的なイベントのひとつとして、2013年3月、東京ディズニーリゾートではじめて挙げられた同性同士の結婚式がある。

今回、その張本人である東小雪さんにインタビュー。元タカラジェンヌであり、現在はLGBTアクティビストとして活動する東さんはディズニーにおける同性結婚式の可否をツイッターで知らせ、LGBTの存在や権利を広く知らしめた人物。まさに「メディア化する個人」だ。多様性のある社会やそれを取り巻くメディアについてお話を聞くため、LGBTに関する情報発信拠点のひとつ「カラフルステーション(渋谷区神宮前)」に足を運んだ(取材・佐藤慶一、徳瑠里香、藤村能光[サイボウズ式]/写真・神谷美寛)。

歴史的瞬間、NYの街全体が祝福ムード 

私とパートナーの増原裕子が、ニューヨークに到着したのは6月25日木曜日のことでした。実はあの最高裁の判決は、いつ出るか分からなかったんです。もともと木曜日か翌週の月曜日ではないか、と言われていたんですが、結局、木曜日には出ませんでした。だからプライド・パレード後の月曜日になるのかなと思っていたら、金曜日にアメリカ全州で同性婚が認められました。

朝10時のニュースでそのことを知った私たちは、ニューヨークのゲイバー「ストーンウォール・イン」に向かいました。到着するとすでに、祝福する当事者の人たちやメディアが多く集まっていました。歴史を振り返ると、ストーンウォール・インは1969年6月末、警察によるゲイバーの摘発がありました。その以前からも酒類を販売してはいけないなどいろんな理由で警官が来ていたそうなんですが、LGBTの人たちはずっと抵抗しませんでした。

ただ1969年のそのときには、「ただゲイが集まって楽しくお酒を飲んでいるだけなのに摘発されるのはおかしい」と抵抗して訴えたんです。この出来事は、ストーンウォール・インの暴動とも言われています。そして、2015年、同じ6月末に、全米で同性婚が認められる判決が出たことには、ときの流れを感じました。まさに歴史的な瞬間に、ストーンウォール・インで立ち会えたのは本当に幸せでした。

そんな瞬間をニューヨークで過ごして感じたのは、局所的にではなく街全体が祝福ムードだったことです。6月のプライドマンス(プライド月間)の期間は街中がレインボー。ニューヨークでは企業も街もお店もレインボーに染まり、「HAPPY PRIDE」と掲げています。ニューヨーク市全体がプライドというものを理解していて、祝福していました。

判決後のパレードは、もう、規模が大きくて本当にすごかったですよ。ニューヨークの5番街では、たくさんのフロートが通っていたり、地下鉄でもレインボーフラッグを持った人でいっぱいだったり。やはりお店としても、たくさんの人が参加しますから、いろんなものを売ったり、サービスを提供していました。

一方、日本ではLGBTという言葉が少しずつ浸透してきたかもしれません。それでも、たとえば、レインボーフラッグをなかなか街で見かけることはありません。ちなみにこの建物の外にはレインボーフラッグがありますし、新宿二丁目やゴールデンウィークに開催される東京のプライド・パレードのときにも見つけることができます。ただ、アメリカと比べるとまだまだ大きな差があると思います。

元タカラジェンヌ/LGBTアクティビストの東小雪さん

SNSを通じてLGBTやレインボーが身近に

今回のアメリカの判決は日本にいる人にはどう受け止められたんでしょうね。たとえ判決を直接知らなかったとしても、フェイスブックで多くの人がプロフィール写真をレインボーにしたのは目にしている人も多いと思います。それで、「あれはなんだろう」と思ったことがきっかけで、間接的にこの出来事を知ることになった人もいるかもしれません。

海外では、本当に多く個人や企業、メディアのソーシャルメディア公式アカウントがレインボーになっていました。ツイッターでは「#lovewins」とつぶやくとレインボーのハートが付いたり、グーグルはスプレッドシートに「プライド(pride)」とタイプするとレインボーになったり(セルA1からA5にかけて一文字ずつアルファベットを入れていくと)――テクノロジー企業が遊び心をもって、楽しい仕掛けを提供しているのはいいことですよね。

日本でも少しずつですが、取り組みは増えているんです。たとえば、去年の春には、GAP原宿店でレインボーカラーにデザインされた特別ロゴが掲げられ、日本発の動きとしてニューヨークをはじめ世界中のGAPへと広がりました。すごく素敵ですよね。ほかにも、自然派化粧品や石鹸を扱うLushは、「Gay is OK」というキャンペーンをおこないました。商品を購入、写真を撮影。「#GAYISOK」というハッシュタグをつけて、ソーシャルメディアに投稿するというプロモーションでした。

そのキャンペーンでは、写真を撮ってSNSに投稿するのがハードルなのかなと思っていたんです。でも、最近の特に若い世代――当事者も、当事者を理解して応援する人も――積極的に写真をアップしていて、すごくいい流れになっていると思いました。昔はよく当事者は顔を出すのが怖かったり、応援する人は自分がLGBTだと思われたらイヤだという声を聞きましたが、いまは普段使っているツイッターやインスタグラムのなかに、生活の一部としてLGBTやレインボーの写真が投稿されていて嬉しいですね。

SNSやメディアを通じてそういう風景が当たり前になることで、多くの人にとってLGBTをとりまく社会の問題がどんどん身近になっていって、「応援することもいいことだよね」「けっして恥ずかしいことではないよね」という雰囲気や価値観が広がったらいいなと思います。

電話をかけただけ。でも回答が変わった

日本においてLGBTの認知や理解の促進という意味では、個人の力も大きく貢献してきたと思います。たとえば、10年ほど前からこの分野で活動している杉山文野さん(カラフルステーションも共同運営している)。性同一障害であることを公表し、自身の体験などを書籍や講演などで広く伝えたり、東京レインボープライド2015の共同代表もされていて影響力のある方です。

私はと言えば、2013年3月、東京ディズニーリゾートで同性のパートナーと結婚式を挙げました。そのときに、ディズニーからの公式回答を公開する場所としてツイッターを使いました。ディズニーに同性の挙式が可能なのか問い合わせたとき、「片方がタキシードで、片方がウェディングドレスなら可能」という回答が来るとすぐにツイート。1週間後、回答が変わり、両方ウェディングドレスでも可能だという返答があったときにもツイートしました。後者は7000人以上にリツイートされ、それを見た新聞社の方にニュースとして取り上げられました。 

ディズニー側の回答が変わったことは、それだけ象徴的な出来事だったということです。ただ、私がやったことは、どうしてもディズニーで結婚式を挙げたかったので、インフォメーション宛に電話をかけた。ただそれだけです。多くの人は「どうせだめだろう」とか「断られたら悲しいな」という先入観が邪魔をしてしまって、なかなか行動まで移れないこともあると思います。結果的に私が動いたことで、ディズニーで同性結婚式ができる事実が認識され、広がっていきました。これは現象としてとてもおもしろかったです。

あのときを振り返ってみても、はじめから自分がメディア化しようとは思っていませんでした。発信を積み重ねていた結果、メディアに波及していったんです。どんどんツイッターなどで私が発信する情報が遠くまで広がっていくうちに、フォロワーも増え、いまでは1万人を超えました。結婚式のウェディング姿もツイッターで見たという人が本当に多くて。LGBTや同性婚について考えたことがなかった人でも、「ディズニーで女の子同士の結婚式があったよね」と記憶してもらえているのは嬉しいことです。

宝塚100年の歴史、たった一人のレズビアン

それでも、課題はあります。たとえば、日本ではまだカミングアウトがむずかしいこと。日本にはLGBTが人口全体の7.6%いると言われています(電通ダイバーシティ・ラボ調査)。佐藤・鈴木・高橋・田中といった日本人の上位の苗字を足した数より多く、40名のクラスであれば数人がLGBTという数字です。ただ、実感としてそれだけ多く感じることはまだないと思います。

私は宝塚歌劇団の出身ですが、宝塚100年の歴史のなかでも同性愛者であることをカミングアウトしているのは、いまのところ私ただ一人です。でも、宝塚はこれまで4000人以上の生徒を輩出しています。7.6%という数字と照らし合わせても、いまだに一人というのは不自然なことですよね。やっぱり、そのくらいカミングアウトのハードルは高いんです。

私の場合、自分のセクシュアリティも宝塚出身であることも隠したくないと思って、2010年秋にツイッターを使ってカミングアウトをしました。その当時、リアルなつながりでは、レズビアンの私としての人間関係ができつつありました。それでもカミングアウトしてすぐは、「宝塚出身なのを聞いていいのかな」とか、相手に気を遣わせてしまう場面があったと思います。

そこで思ったんです。これはもう、全方向に言っていかないと、って。自分がタカラジェンヌだったこと、レズビアンであることをオープンにしたことで、トークイベントやシンポジウムに呼んでいただく機会が増えました。実はパートナーの増原と出会ったのも、イベントがきっかけでした。

自分らしく生きたい、自分に正直に生きたい、私は私でいることでやめられない――そう考え悩みながら自分と向き合ったことで、いまのパートナーとも出会えて、周りの人たちともいい関係が築けるようになりました。だから、カミングアウトしてよかったです。ただ、一般論として、カミングアウトすること、自分に正直になることは、とても勇気がいります。

講演会などでお話すると、これまでは「LGBTをはじめて見た」という声が多かったんですが、最近ではLGBTという言葉を知っていたり、LGBTの友達がいるという人が増えたという実感はあります。ただ、むずかしいのは、LGBTは差別しないけれど、仮に自分の子供がLGBTだったら困るという反応。もしそういう状況になったら、LGBTに関する知識をつけ、向き合ってほしいと思います。たとえ自分の子供がLGBTでも、ありのままでいいんだよ、ということを伝え続けてほしいです。 

東小雪(ひがし・こゆき)
1985年、石川県金沢市生まれ。元タカラジェンヌ/LGBTアクティビスト。テレビ・ラジオ出演、企業研修、講演、執筆など幅広く活動中。TBS系列『私の何がイケないの?』、NHK Eテレ『ハートネットTV』、TOKYO MX『モーニングCROSS』などメディア出演多数。著書に『なかったことにしたくない 実父から性虐待を受けた私の告白』(講談社)、『レズビアン的結婚生活』『ふたりのママから、きみたちへ』(ともにパートナーの増原裕子氏との共著、イースト・プレス)。オンラインサロン「こゆひろサロン」運営。Twitter: @koyuki_higashi、Blog: 元タカラジェンヌ東小雪の「レズビアン的結婚生活」ブログ