現代新書
〈税金逃れ〉の衝撃!
富める者ほど払わない。そのツケ、払うのはあなたです

【前書き公開】深見浩一郎=著『〈税金逃れ〉の衝撃』
〔photo〕iStock

タックス・ヘイブン、秘密口座……。グロ-バル企業や富裕層の巧妙な税金逃れは貧富の差を拡大し、今や国家の存立を脅かす規模にまでに至った。その巧妙な手口とは? 対抗策はあるのか? 講談社現代新書の最新刊『〈税金逃れ〉の衝撃』の前書きを特別公開。


はじめに──トマ・ピケティの議論から 

一つのグラフの衝撃

 本書は、国際的な租税回避と経済格差の拡大が同時進行する時代状況を俯瞰し、今日の国民国家の今後のあり方について考えていく。

 今日の国際租税制度は、100年ほど前に導入され、グローバル化した現代にはまったく似つかわしくない時代遅れの代物で、昨今の国際的な租税回避に付け入る隙を与え、完全に手玉に取られている有り様である。

 偶然目にした、一つのグラフの印象はきわめて強烈だった。「税引前の総所得に占める上位納税者の割合」と題する第二章の図2-5がそれだ。グラフは、米国における不平等が大恐慌以前の状況に舞い戻ろうとする、正にその様子を捉えたものだったからだ。

1913年-98年にかけてのアメリカの所得税納税者上位1%(破線)と上位10%(実線)のそれぞれが、申告所得全体に占める割合

 このグラフを作成したのは、フランスの経済学者エマニュエル・サエズとその共同研究者トマ・ピケティだ。ピケティは数年前から世界で最も注目されている経済学者のひとりであり、日本でもその著書『21世紀の資本』の翻訳が出たのを機に高い評価を受けていることはご承知の通りである。

 ピケティは各国の税務申告資料を基に経済法則の発見に至った。これに対して、本書は決して税務申告されることのない租税回避に焦点を当てる。地下経済の正確な規模は、推定ないし推測するより他にないが、第四章で触れるように、その規模は国家財政にも匹敵する。

 税務申告資料から発見されたr>gなる両者の乖離は、租税回避を加味すればgが大きくなり、その差は縮まるはずである。たとえば、江戸時代の農民は税金として年貢を藩主に納めていたが、コメの収穫高を定期的に見直す検地が行き届かなかったため、これまでの想像よりも、生活水準はずっと豊かだった。ピケティの結論に租税回避がどう影響するか、是非訊いてみたいところである。

 過去200年に亘る申告資料に基づくピケティ研究の正当性がメディアで強調されるのを聞くと、『合衆国貨幣史』によってやはり実証研究者として名を馳せたミルトン・フリードマンとの類似点を感じてしまう。フリードマンのk%ルールはとうの昔に忘れ去られてしまった。ピケティの場合はどうだろう。

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