イギリスの研究者は“資金調達力”が必要? ケンブリッジ大教授が語る、研究の社会的意義
日本人教授に聞く、オックスブリッジの魅力

シリーズ「日本人教授に聞く、オックスブリッジの魅力」、第1回は、京都大学で学士・修士、カリフォルニア州立大学バークレー校で博士号を取得し、1994年よりケンブリッジ大学講師を務め、2007年に工学部教授に就任した曽我健一教授にお話を伺いました。

スマートなインフラを築く

― ケンブリッジ大学ではどのようなことを研究されていますか?

光ファイバー、ワイヤレスなどのセンサー技術を活用し、土木構造物がどのように老化していくかをテーマに研究しています。経時変化を測定する研究自体は昔からあるのですが、光ファイバーやワイヤレス、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)のセンサーの技術が進歩し、低価格になってきたことにより新しいことができるようになりました。

たとえば、人体の神経のように構造物にもセンサーを張り巡らせ、新築の状況からの経時変化をみるstructure health monitoringという技術があります。10年くらい前に、産学連携を活性化するためにイギリスのブラウン元首相主導のもと米国MITとケンブリッジ大学との共同でThe Cambridge-MIT Instituteが始まりました。その一環として、MITのグループとトンネルや橋などのインフラに対して、もっと経時変化を測定する(センシングする)取り組みが進んでいます。

さらに5年くらい前からは開発した技術を広めたいと思い、Cambridge Centre for Smart Infrastructure and Construction (CSIC)を作り活動しています。目的はセンサー技術をもっと現場で使ってもらうことで、すでに81箇所でデモンストレーションが行われています。世界の金融の中心地であるCity(ロンドンの中心街)とヒースロー空港をつなぐCross Railというヨーロッパで一番大きなトンネル工事にも使われています。ロンドンには地下鉄のように古いインフラもありますが、イギリス政府は金融の中心であるCityに外資をもってくるために、新しいインフラをいかに整備するかに力を注いでいます。

このようなインフラの仕事は100年単位で設計する必要があるので、安く安全に維持管理をしていくために効率よくセンサー技術を使うことが大事です。IoT(Internet of Things)も進んできて、将来的には構造物の経時変化について、これまで知られていなかったような良いデータがどんどん出てくると思います。