サッカー
二宮寿朗「中村俊輔、世界基準のFKの極意」

日本代表GK・東口を翻弄

 あまりに鮮やかで、あまりに見事だった。
 7月19日、ガンバ大阪-横浜F・マリノスの一戦は劇的なラストが待っていた。G大阪の2-1で迎えた後半アディショナルタイム、最後のワンチャンスが横浜にめぐってきた。

 ゴールまで約25メートル、ほぼ正面からの直接FK。キッカーの中村俊輔は8枚並んだ壁のうち、中央やや左の位置に立っていた192センチの長身を誇るFW長沢駿の頭上を敢えて狙い、上から振ってくるような高速のボールでゴール左上の隅に放り込んだのだ。

 曲げて落とす。それにコースもスピードも文句なし。まさにワールドクラスの一撃で、欧州のサッカーメディアも取り上げているほどだ。

 セルティック時代の2006-07年シーズン。欧州チャンピオンズリーグ(CL)のグループリーグ、マンチェスター・ユナイテッド戦で見せたアウェー&ホーム2戦連発のFKを知る欧州のサッカーファンにとって、今なお中村のFKが関心の対象になっているということがうかがえる。

 中村にとっても会心の一撃だったに違いない。決めた後の大きなガッツポーズがそれを物語っていた。日本代表GK東口順昭を、ボールに近づけることすら許さなかったのだから――。

 ほれぼれするようなキックに目が行きがちではある。ただ相手GKを翻弄したところに、このFKの奥深さが隠れていると思っている。

 中村がキックを放った瞬間、東口は反応できていない。壁の一番高いところを狙ってきたため、軌道が確認できるまでにタイムロスもあった。体の向き、蹴り方、そして壁を逆利用してGKにコースを悟らせず、気づいたところで時すでに遅し。東口はゴール左側に大きく一歩踏み出すだけで精いっぱいで、見送るしかなかった。