プーチン大統領と安倍総理が接近
〜日米関係悪化のリスクにヒヤヒヤする外務官僚

Vol.065 インテリジェンス・レポートより
2014年9月に行われたAPECサミットでのプーチン大統領と安倍総理の一コマ〔PHOTO〕gettyimages

「北方領土問題に関するロシアの強硬姿勢」

【事実関係】
7月18日、ロシアのスクボルツォワ保健相が、北方領土の色丹島を訪問し、新しく完成した病院などを視察した。

【コメント】
1.
安倍晋三政権は、ロシアとの関係改善を模索し始めている。6月24日夜、安倍首相がロシアのプーチン大統領に電話をかけた。約30分の電話会談で、安倍首相は、<プーチン氏が年内に来日する方針を確認した。ウクライナ情勢に関して欧米と歩調をあわせる安倍首相は、ロシアが平和的、外交的な解決に向け、停戦合意の完全履行など建設的な役割を果たすよう要請した。>(6月24日 産経ニュースより)。

表には出していないが、日本側は対露制裁の緩和について、ロシア側に示唆しているはずだ。そうでなければ、ロシアがプーチン大統領の年内訪日について協議するメリットはない。

2.
7月に入ってから、クレムリン(ロシア大統領府)より興味深い情報が流れてきた。ポイントは以下の四つだ。

(1) プーチン大統領は、安倍首相が電話をかけてきたことを、日露関係正常化に向けたステップとして高く評価している。プーチンの安倍首相に対する個人的信頼感は、一層強化された。
(2) 会談後、プーチンは訪日準備を行う方針を確定し、ロシア外務省に対して「日本外務省と協議せよ」と指示した。
(3) クレムリンでは訪日の時期とテーマに関する協議が始まった。関係省庁に対する資料要求も行われている。クレムリンとしては10月末~11月初頭のプーチン訪日を考えているが、具体的日程については日本側の提案を待っている。
(4) プーチン訪日の際は合意文書を作成しなくてはならない。経済的、政治的成果として何が達成されるか、またクリル諸島(北方領土)をめぐる交渉でどのような展望を見出されるか、現時点ではまったく明らかになっていない。

3.
今回のスクボルツォワ保健相の色丹島訪問は、クレムリンの指示を踏まえた上で実施されたと見るのが妥当だ。保健相は、メドベージェフ首相の指揮命令下にある。訪問によって、北方領土問題に関するメドベージェフの「色丹島もロシア領なので、日本に返還する必要はない」という強硬路線を示したものと解釈される。

4.
6月24日の安倍-プーチン電話首脳会談を踏まえ、日本外務省もプーチンの訪日準備に向けた準備を始めている。もっとも外務官僚は、安倍首相の強いイニシアティブがあるので仕事をしているのであって、内心では「プーチン来日が実現すると日米関係に悪影響が及ぶのではないか」と真剣に心配している。

5.
実際に、米国はホワイトハウスも国務省も日露接近を歓迎していない。プーチンはむしろ、この辺りの事情をわかった上で日米間にクサビを打ち込もうとしている。プーチンの狙いは、G7によるウクライナ問題をめぐるロシアへの制裁を解除することだ。その上で、安倍首相のイニシアティブで来年の伊勢志摩サミットにプーチンが出席し、G8への復帰を果たすことではないかと見られる。

プーチンの訪日準備に踏み込むことによって、日本は米国との関係においてはかなり面倒なリスクを負うことになる。……(以下略)

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」(2015年7月22日配信)より