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【現役世代必読】
トラブル続出! 認知症で「相続」ができない【前編】
親しか知らない預金口座はどうなるのか

〔PHOTO〕gettyimages

いつかは自分も最期を迎えるとわかっている。でもイメージしていたのは、最期まで自分で物事が判断できる逝き方だ。それほど多くないけれど、家族に財産は遺したい。でも、アレはどこだっけ……。

家族会議で発覚

「オヤジの財産探しの大騒ぎを経験して、ほとほと疲れましたよ。うちは家族仲も悪くない。オヤジには隠し財産も借金もなかった。それでも、相続に認知症がからんだら、これほどの大事になるとは想像もしなかった」

東京・杉並区在住の佐々木信孝さん(仮名・63歳)はこう語る。

相続はただでさえ、手続き上も心理上も難しい問題だ。家族が亡くなり、葬儀や墓の手配、家や遺品の整理……と、人ひとりの人生の後始末に追われるなか、遺族は銀行とのやり取りや相続税の申告など、膨大な手続きをこなさなければならない。さらには資産、ありていに言えばカネの問題で、兄弟親戚の思いもかけない一面を見せられることもある。

ところがいま、それに輪をかけて事態を複雑化する問題が、多くの家族を襲っている。認知症だ。

厚生労働省の推計では、65歳以上の4人に1人が、認知症またはその予備軍とされる。この「国民病」が足を引っ張り、相続がスムーズにできないだけでなく、家族関係を壊してしまうトラブルが多発しているのだ。

冒頭の佐々木さんの例を見ていこう。佐々木さんは、89歳の父親が、数年前からどことなく自信がなくなった様子で、食事を摂ったことを忘れることがあるなどと、87歳の母親から聞いていた。

昨年、母親が半ば無理やり連れていった病院で父親が認知症と診断されたのを機に、今後のことを考えようと佐々木さんは父親、母親、妹、弟を集め、家族会議を開いた。

佐々木さんは、こうなった以上、相続のことも考えておくべきだと、両親に預貯金の通帳や固定資産税の通知書など一式そろえてもらい、検討を始めた。だが各通帳の金額を書き出してみると、みなが怪訝な顔になった。

「預金が、こんなに少ないはずがない」——。