国家・民族 ドイツ
71年前の犯罪で94歳の老人に禁錮4年!
罪名は「30万件の殺人幇助」

7月15日、法廷で判決を聞くオスカー・グレーニング被告 〔PHOTO〕gettyimages

94歳になった「アウシュヴィッツの簿記係」

被告席にちょこんと座っていたのは、オスカー・グレーニング、94歳の小柄な男性だった。別段怯えてはいなかったが、堂々としているわけでもなく、どちらかというと、キョトンとしていた。

映像で彼の表情を見た途端、私は自分の父のことを思い出した。父はもうすぐ91歳で、最近は子供のように可愛く(?)なってしまった。もし父が被告席に座り、こんなに大勢の人やカメラに囲まれたら、やはりキョトンとするだろう。私は、グレーニングがとても可哀想になった。

グレーニングは、元ナチの親衛隊員だった。71年前、つまり、23歳の時、アウシュヴィッツで働いていたため、30万人の殺害に関する幇助罪で訴えられた。強制収容所の職員の名簿や勤務表は多くが失われているが、彼の書類は見つかり、アウシュヴィッツにいたことが証明されている。

検察は3年半の禁錮を求刑していたが、この日の判決では、それより長い4年の禁錮刑となった。ただ、高齢でとても弱っているので、本当に収監されるかどうかはわからない。

アウシュヴィッツでは、貨物列車で到着した人々は、その場で持ち物のすべてを没収された。それをドイツ人が整然と分類していったのだが、コートやジャケットの縫い目を解くと、必ずと言ってよいほど貴重品が隠されていたという。ユダヤ人の最後の財産。ダイヤモンド、貴金属、そしてお金・・・。

23歳の親衛隊員グレーニングは、その中から外貨を分類し、計算するのが仕事だった。だからメディアはグレーニングのことを、「アウシュヴィッツの簿記係」と少し蔑んだ呼び方で書く。

アウシュヴィッツで見たメガネの山 (筆者撮影)

2011年、私はアウシュヴィッツを訪れた。その時一番驚愕したのは、収容所のバラックでも、遺体を焼く炉でもなく、ユダヤ人の遺品だった。幾つも連なった部屋がガラス張りの展示室になっており、整然と分類された品物が、ガラスの向こうに天井まで積み上げられていた。

何千ものメガネが積まれた部屋があった。衣類の山の部屋もあれば、櫛とブラシだけが山になっている部屋もあった。お人形の山を見た時は、こんなにたくさんの女の子がここにはいたのかと息が詰まった。義足や松葉杖の山まであった。

話には聞いていたが、この完璧なまでの整頓癖には恐怖を感じた。すべてがきっちりと、当たり前のように機能しており、偶然の入り込む余地はなかったに違いない。

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