8月15日に戦争は終わっていなかった!
両親の体験をもとに“感覚”として戦争を写し取るマンガ

『あとかたの街』『凍りの掌』作者・おざわゆきインタビュー【前編】

第44回漫画家協会賞コミック部門の大賞を『凍りの掌 シベリア抑留記』と『あとかたの街』の2作品が受賞した。作者は漫画家のおざわゆきさん。自身の両親の戦争体験をもとに描かれた作品への思いをきいた。

* * *

8月15日に戦争は終わっていなかった

−−『凍りの掌 シベリア抑留記』(以下『凍りの掌』)は、お父様の体験がもとになっているそうですね。作品を描いたきっかけについて教えてください。

おざわ: 高校の時、家族に戦争体験を聞いてレポートを書くという課題があり、初めて父に話を聞きました。それまで兵隊に行っていたことや捕虜の経験があるということはうっすら聞いていましたが、まさか捕虜になったのが終戦後だったとは……と驚きました。8月15日で戦争は終わっていなかったんですね。

−−昭和20年8月8日にソ連(現ロシア)が対日参戦をしています。まさに終戦直前のことです。そこから武装解除、シベリアへの強制連行。

おざわ: そうです。私にとっての父は、大正生まれで派手なことや軽薄なことが好きじゃない昔ながらの人でした。その父が、氷点下何十度にもなるような極寒の地、しかも外国で4年も働かされていたなんて考えもしませんでした。

そもそも高校生だった私にとって、太平洋戦争はアジアを中心とした南方諸国で行われているイメージだったんです。水木しげる先生の作品世界ですね。レポートを読んで、母も初めて抑留中の父の詳しい状況を知ったそうです。