現代新書
イスラム国「建国」から1年 
非日常が日常化したこの脅威はいつまで続くのか

新たなテロの時代に日本人が覚悟すべきこと

「イスラム国」は今年6月、建国1年を迎えた。「建国1年」で活動を活発化させるISの狙い、そして「敵」と名指しされた日本人の自衛策を、危機管理のエキスパートとして中東のイスラム過激派の動向にも詳しく、先日『「イスラム国」と「恐怖の輸出」』を刊行したばかりの管原出氏に訊いた。

「イスラム国」の中心になっているのは誰か?

Q:菅原さんの新刊『「イスラム国」と「恐怖の輸出」』が発売される直前の6月末、フランス、チュニジア、クウェートで「イスラム国」、およびそのシンパによるものと思われるテロが相次ぎました。アメリカでも、テロやテロ未遂事件が連日のように報じられています。イスラム国は再び、活動を活発化させているのでしょうか。

菅原 この時期にテロが起きることは、ある程度予想していました。

1年前の6月29日は、「イスラム国」が自らの建国を宣言した日です。1周年のタイミングで、自分たちの存在感を世界に示すようななんらかの大きな行動に出るだろうと思っていました。むしろもっと派手な動きを予想していたくらいです。

イスラム国は昨年、イラク北部の拠点都市・モスルを陥落させ、建国を宣言したわけですが、そこで1周年を記念した派手なパレードをするとか、宗教指導者・バグダーディーが演説するといった動きがあるかもしれない、と思っていました。実はアメリカも、そのタイミングを狙って空爆してやろうと待ち構えていたんです。ところが実際には、まったくなかった。

狙われていることを十分承知して、警戒したということもあるんでしょうが、実際に6月にモスルで起きたことは、バグダーディーの側近の一人の公開処刑でした。
処刑されたのは、「イスラム国」の外国人部隊を束ねていた指導者の一人です。これに抗議して、250人くらいの外国人戦闘員が、モスルからシリアのラッカに移動したと言われています。

イラク人指導者と外国人の対立が激化して、建国1周年をお祝いするどころではなかったのかもしれませんが、それが即、イスラム国の弱体化を意味するものではありません。

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Q:イスラム国の指導者はどういう人物なのですか。また、中核になっているのはどういう組織ですか。

菅原 宗教指導者はバグダーディーです。バグダッド大学でイスラム神学の博士号を取得し、集団礼拝の指導者をしていた人物で、イスラム教徒であれば誰もが敬服するような、威厳ある演説をすると言われています。

しかし、「イスラム国」の組織のグランドデザインを描いたのは、イラクのフセイン政権の残党や軍の幹部で、主にスンニ派の人たちです。

彼らがバグダーディーという優秀な神学者を発見して、宗教指導者に据えた。そのような成り立ちから、そもそも中核にいたのはスンニ派系イラク人でしたが、最近は外国人が大量に流入してシリアを中心に別の派閥を作っています。

日本への脅威は?

Q:イスラム国が、日本をターゲットにすることはありますか。その場合、どのようなテロが予想されますか。

菅原 後藤健二さんを殺害したとき、「イスラム国」は「日本をターゲットにする」と公言しました。それによって世界中のいろんな犯罪組織が、「『イスラム国』は日本人をほしがっている」と認識してしまった。日本人を誘拐して拘束すれば、『イスラム国』が高く買ってくれる、というわけです。そういう意味では、直接的な脅威以上の脅威が高まっている。

一方日本国内で『イスラム国』が直接的な行動をとる可能性は低いと思います。『イスラム国』を支持する個人に対し、ネットを使って働きかけることは考えられますが、彼らに忠誠を誓ってテロ活動を行おうとする有力な組織はいまのところ見あたりません。

シリアやイラクなど『イスラム国』の直接的な支配地域や、その周辺地域に日本人が出ていけば、拘束されて日本を脅したり、要求を突きつける材料にされることは当然あります。