京都大学総長・山極寿一さんが選ぶ「わが人生最高の10冊」
冒険と背徳。複雑だからヒトは面白い

昔から冒険談が好きだった

うちは母親が本好きで、子供の頃は本をどんどん買ってくれましたし、近所に貸本屋があって、そこに行っては、『ガリバー旅行記』や『ロビンソン・クルーソー』など主に探検物を借りていました。

当時から、冒険談とか動物物が好きでしたね。そして、本で学ぶだけでなく、そこで得た知識を実践していた(笑)。

実家の近くに一橋大学の広いグラウンドがあって、草むらで秘密基地を作ったり、木の枝に縄をかけてターザンごっこに興じました。多摩川まで自転車で行って釣りをしたり、蛇や泥鰌を捕まえたりね。

ここに挙げたのは「読んだ順ベスト10」ですが、それぞれの本からいろいろな影響を受けています。

1位の『大地』は、小学校の高学年から中学生の頃に読みました。当時の僕は、将来、自分がどう生きていくかなど、まだ真剣に考えたこともなかった。

そんなとき、近代化を迎えた中国を生きた主人公一族3世代の壮大なこの年代記に出会ったんです。

登場人物が思わぬ出来事に遭遇したり、激動の時代に翻弄されているのを見て、「誰しも、人生は自分の思う通りにはならないんだな」ということを学びました。

2位の『闇の奥』は、少年時代に無邪気に憧れていた冒険のイメージをバッサリと斬られるような衝撃を受けた作品です。

緑の魔境を浮かび上がらせる自然描写は素晴らしいのだけれど、熱帯の森の持つ不気味さ、人の心を蝕む恐怖に初めて出会い、「これがアフリカなんだ」という、本物の怖さを見せつけられた気がした。

それまで探検物を読んで、ただウキウキしていた私の幼心に水をかけられたというか、目を覚まさせてくれました。

ちょうど思春期、「背徳」という言葉に、何となく惹かれるようになったときに読んだのが、3位の『恐るべき子供たち』

姉と弟の、一種の恋の話ですが、文章から醸し出される性の香りに震えました。子供たちが持つ、危うく脆い性の世界の雰囲気は、大人になりきると、もうわからないと思うのです。しかし、同じ子供だった僕には、非常に敏感に伝わってきた。それに、僕にも姉がいましたし(笑)。

この小説をきっかけにランボーや萩原朔太郎、中原中也と、いろいろな詩を読むようになりました。ちょっと背徳の匂いのするような詩を選んでいましたね。

大学時代はスキー部で、京大のヒュッテがある志賀高原へよく行っていたんですが、ある日、スキーの練習をしていたら、雪山でじっと猿を見ている人に出会ったんです。妙な人だなと思ったのだけれど、それが同じ理学部の大学院でサル学をやっている先輩だった。

探検熱がよみがえった

そこで初めてサルについて勉強してみようかと思ったんです。そんなとき読んだのが、伊谷純一郎先生の『ゴリラとピグミーの森』。これがメチャメチャ面白かった。大学生になる頃には、子供時代の探検熱はすっかり冷めていたのですが、この本を読んで、再び頭をもたげてきました。