読書人の雑誌『本』
松坂大輔、涌井秀章らを育てたあの名監督が明かした
「甲子園62勝」の最強チームの作り方

高校時代の松坂大輔と写る小倉清一郎氏

参謀・小倉清一郎――野球好きで、彼の名を知らないものはいないだろう。名門・横浜高校野球部などで指導者として辣腕を振るい、松坂大輔、涌井秀章らを育てた「高校野球界の名伯楽」だ。全国制覇3回、甲子園62勝。小倉は一体どうやって「常勝軍団」を作り上げたのか。その秘密を綴ったのが、『参謀の甲子園』だ。「上手な選手を集めても、それだけでは勝てない」――14年夏に横浜高校の部長を退任した小倉が、初めてチーム作りのノウハウを明かしている。

神奈川を制する者は全国を制す

7月になると、昨年まで夏の甲子園出場をかけて戦っていた神奈川県予選を思い出します。

神奈川を制する者は全国を制す―。かつてこう言われた時代がありましたが、今も変わらず、神奈川は全国でも屈指の激戦区です。昨夏の大会も全国最多の190校が参加。横浜高校をはじめ、桐蔭学園、Y校(横浜商業)、横浜隼人、慶應義塾、東海大相模など、全国的にも有名な強豪校がしのぎを削っています。

神奈川という地域は、高校野球人気が異常に高いのです。夏の決勝戦は、横浜スタジアムが満員札止めになるほどの盛り上がり。それどころか、春・秋の県大会でも、強豪校同士の好カードになると、保土ケ谷球場(旧保土ケ谷・神奈川新聞スタジアム)の外野席が開放されるほどの人気ぶりです。

数年前、夏の神奈川大会3回戦で横浜がY校と対戦した日のこと。試合後、会場から遠く離れた自宅近くの飲食店に立ち寄ると、「あ、小倉さん、Y校戦どうだった?」と見知らぬおばちゃんに声をかけられました。世の中の人は普通、県大会3回戦のカードなど、いちいち把握していません。しかし、これが神奈川なのです。

そんな環境で長年やらせてもらった。昨年8月限りで、23年間在籍した横浜高校を退任しましたが、指導者として、勝負師として、本当に恵まれていました。東海大一高、Y校、横浜高校で高校野球を指導して41年。3校で甲子園に出場した回数は32回。優勝3回。通算勝利数は62勝でした。