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「いま必要なのは、“とりあえず観ろよ”のスタンス」 気鋭ビデオブロガーが語る、スマホ動画消費の違和感と理想
Ari Keitaさんインタビュー
ビデオブロガーでキュレーターのAri Keitaさん

日本でも「YouTuber」という言葉が知られてきている。CMや屋外広告で見かける「好きなことで、生きていく」というYouTubeのキャッチコピーや、「THE MANZAI 2014」で博多華丸・大吉がYouTuberをテーマにした漫才を披露したことで、この言葉は広く認知されるようになったかもしれない。だが、実際のところ、それだけで生計が立てられるのかどうか、といった側面が大きく注目され、コンテンツの内容や質についてはあまり注目されていないように思う。

たとえば、小中学生ではなく20~30代というターゲットに向けて、自覚的にコンテンツをつくり、堅いビジネスメディアとも相性のよいYouTuberというと、かなり限られるのではないか。そんな思いをもつ筆者が注目するのは、2010年からYouTubeへの動画投稿を続け、自身のチャンネルでビデオブロガーとして活動するほか、動画キュレーション番組「VEST MEDIA」のキュレーターを担当するAri Keita(アリケイタ・29歳)さん。購読者は約9万人、累計の動画再生は2000万回にのぼる。

個人で動画投稿をはじめ、現在は「次世代メディア・エンターテインメント・カンパニー」を標榜するブレイカー株式会社に所属する。今回、アリさんが映像撮影で利用するBREAKER LAB(ブレイカー・ラボ)にて、ビデオブロガーというキャリア、活動の思い、個人のメディア化、動画市場の盛り上がりなどについて伺った。

語学留学、就活失敗、YouTubeで時事ニュース紹介へ

YouTuberになる大本のきっかけは、大学卒業後、アメリカに語学留学したことにさかのぼる。1年半という留学期間中、「本当に時間があった」というアリさんは、かなりの時間をネットサーフィンに費やした。そこで、ふとYouTubeを観ていると、元ラジオDJがビデオブロガーとして活動していたのだという。

アメリカではちょうどYouTube パートナープログラムがはじまったころ。YouTubeに投稿した動画コンテンツを、たくさんの人に観てもらうことで、収益化する仕組みができたのだ。このプログラムで生活できる人がいたことは、アリさんにとって魅力的に映ったという。そうこうしているうちに留学を終え、日本に帰国したアリさんは、就職活動をはじめた。

「クリエイティブな仕事に就きたいと考え、広告代理店などを受けたのですが、ことごとく落ちたんです。そこで、就職相談員の方にお話を聞きにいったのですが、『いや、きみ就職できないよ。既卒だから、業界を考えれば入れるところはあるけれど』と言われて。結局、就職活動をやめてしまったんです。兄貴に相談してみても、『株でもやれば』と言われる始末でした(笑)。

そんななかで、まずは自分の考えを伝えたいと思い、ブログをはじめました。でも、正直、文章がうまくないからどうしようかと考えていたときに、アメリカではYouTubeで生計を立てている人がいたのを思い出したんです。自分でもやってみようと思い立ち、当時は働きながら、空いた時間で動画を撮影してアップするという生活を1年ちょっと続けました」

当初は、留学経験を活かし、英語で話す動画コンテンツをつくっていた。アメリカでYouTuberという存在を観ていたので、顔出しで話すことにもまったく抵抗がなかったという。だが、しばらくして、さすがに英語だけのコンテンツは辛くなり、別の切り口を模索するようになった。そこで、目をつけたのが、ニュース紹介だった。

「アメリカのYouTuberで、フィリップ・デフランコ(Philip DeFranco)という人がいるんですが、時事ニュースを取り上げて、それに関する意見や解説を述べて、視聴者にも投げかけるスタイルで動画を投稿していました。当時、日本のYouTubeはお笑いや商品紹介などがおもしろくなりそうな時期でした。でも、そっちよりは、自分のやりたいことをやろうと思い、『とりあえず時事ってみた』をはじめたんです」

そうして生まれた「とりあえず時事ってみた」という動画シリーズは、政治・経済・スポーツ・芸能など時事ニュースを(早口で)紹介していくというもの。筆者がアリさんの存在を知ったのもこのシリーズだ。多くの人の共通の話題になる時事ニュースは引きがあり、動画を投稿するにつれて、順調に登録者が増えた。そして、アリさんの存在が広く知られる大きなきっかけが訪れた。

それは、3年前に公開した、大津市中2いじめ自殺事件に関するニュース紹介だった。アリさん自身、小中学校時代にいじめられていた経験があり、それに対する思いや考えを動画で伝えた。結果、話題と共感を呼び、50万回近く再生され、登録者が急増。「とりあえず時事ってみた」のニュースを早口で喋るスタイルが知られると同時に、このやり方の可能性や手応えにつながった。

番組公開日にSNSに投稿されるVEST MEDIAのキービジュアル
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