安保法案をめぐる舞台裏から透けてみえる維新の本音
古賀茂明「改革はするが戦争はしない」フォーラム4 Vol.009「日本再生に挑む」より
維新の党のwebサイトより

維新の戦略が見えにくい理由

維新が何を考えているのかよくわからないという声をよく聞く。その最大の原因は、維新と言ってもいろいろな考え方の議員が集まっているからだ。

今回の安保法案に関しては、先月のメルマガ(※2015年6月12日配信)でもお伝えしたとおり、橋下氏の意向を強く受けて、廃案を目指すよりも、維新としての対案を出して、その存在感をアピールするという戦略を採ったが、それを強力に推し進めているのが、大阪系と言われる人たちだ。このグループは、とにかく橋下氏を使って、自民党との連携路線を進めようという考え方が際立っている。元々、大阪維新の会は、旧自民党の大阪府議が中心になって作ったグループだから、自民に政策が近くても不思議ではない。

政策的には、改革を目指すと言っているが、大飯原発再稼動の時には、これに反対する橋下氏に対して、再稼動容認を強力に働きかけるなど、基本的には経済界寄りの政策を採る。改革と言っても企業のための改革だと考えれば良いだろう。

一方、外交・安保政策については、かなりタカ派の人が多いようだ。と言っても、必ずしも定見があるかというとそうでもなさそうだ。ただ、はっきりしているのは、安倍総理に対する共感が強いということである。

これに対して、大阪系以外の維新の議員には、江田前代表や柿沢幹事長ら旧結い系、松野現代表ら旧民主系、片山虎之助議員らの旧太陽系など様々なグループがいる。

政策的には改革派とはとても言えない人も多いし、必ずしもリベラルというわけでもない。ただ、多くの議員は、信念かどうかはともかく、今は、自民との連携を否定し、野党再編を中心に政権獲得を目指すという戦略に賛成している。

「信念かどうかはともかく」と書いたのは、来年の参議院選挙を考えた場合、選挙で自民と戦う議員としては、自民に擦り寄っていては、選挙の時に自民党批判ができなくなって選挙にならないという、「選挙事情」があるので、政策的にリベラルとかタカ派というのとは違って、今は、安倍政権の暴走が酷いから、とりあえず、それには反対しておいた方が得だという損得勘定で考える人達も結構多いということだ。

採決時期を廻る攻防

前回の動画版(※2015年6月26日配信)でも説明したとおり、維新が対案を出すのは、とにかく自民党とはかなり違うハト派的な内容にして、国民にアピールするためだ。さらに、民主が反対だけだというアピールも同時にできるという計算もある。

一方で、最後は、法案の採決は容認することで、混乱の中の強行採決というイメージを避けたい安倍総理に大きな貸しを作るという橋下氏や大阪系議員の思惑にも合致する。非常にうまく計算された作戦だ。

しかし、大阪系以外の議員の中には、本気で与党の安保法案に反対の議員もかなり存在する。彼らから見れば、対案を出すところまでは、ギリギリ容認できるが、採決に協力するということは容認できない。松野代表が、対案の審議が一回か二回で採決なら協力できないと言っているのは、こうした議員に配慮している面がある。

審議を遅らせてうまく27日を超えさせる事ができれば、参議院で60日採決しない場合に、会期末の9月27日を迎えてしまい、60日ルールで衆議院の再議決という手段を与党が取れなくなってしまう。そこで、28日まで採決を遅らせるという条件で、与党に協力しようという奇策が出て来た。理屈の上では、60日ルールを使えなくさせて、参議院で審議を遅らせ、あわよくば廃案を狙うというのだ。

この作戦を主導したのが、沖縄選出で、元自民党、元国民新党のS議員だ。しかし、15日にも採決すると言っている自民党にそこまでの遅延を認めさせるのはかなり難しい。

そこで考えたのが、自民党が採決を28日まで遅らせれば、民主党も採決に出席させるという案だった。そうなれば、全く強行採決ではなくなり、与党としては最高のシナリオだということで自民党も乗ってくるのではないかという案だ。

維新の内部では、こうした案が本気で模索されたのだが、あろうことか、維新の幹部の一部がいきなり民主党に28日採決で協力できないかと打診してしまったことから、民主党の反発を招き、いったんはこの案は消えたようだ。

そもそもこの案で行っても、自民党が乗るかどうかわからないし、乗ったとしても、結局は参議院で強行採決される可能性がある。その時に、衆議院では普通の採決になっている分だけ、与党へのダメージを小さくするから、結局は安倍政権に協力したことになるのではないだろうか。

今後は、採決時期と、採決に出席するかどうかについて、維新の中で様々な争いが起きてくると思われる。・・・(以下略)

古賀茂明「改革はするが戦争はしない」フォーラム4(2015年7月10日配信)より

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