【有料会員限定記事】時代が変化してもマーケティング手法の本質は変わらない
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デジタル分野の略語でヘマをしても問題ない

荒々しい狂乱の1960年代に、ティーンエージャーでありながら初の事業を起ち上げた年寄りとして、私は、今日のデジタル技術の進歩と、それが大小の事業にもたらした機会にかなり上手に対応していると思います。

新しいプラットフォームやアプリを理解するのは難しいことではなく、ソーシャルメディアやデジタルでのネットワークは顧客との新たな交流方法を与えてくれました。しかしその基礎となる考え方には、従来のビジネスの慣行が反映されています。

失読症に悩まされてきた私は、これまで時々、略語でヘマをやらかすことがありました。これはもう有名な話ですが、ある集まりで、あろうことか私は「ビジネスパートナーの候補者と交渉する前に、『DNA(遺伝子の本体)』を取得しておくべきだ」と言ってしまったのです。聴衆の中には困惑して咳払いする者や、「マジ?」と気まずい顔を私に向ける者もいました。

救われたのは、同席したヴァージンの上級幹部による「リチャード、遺伝子チェックまでは行かずとも、まぁ、秘密保持契約(NDA)があれば十分でしょう」という機転の効いたフォローのおかげでした。

略語のアルファベットのワナにはまってしまったごく最近のケースは、マーケティンググループとのやりとりの中で「UGC」の必要に話が及んだときです。

「UGって何?」と訊き返すかわりに私は「ああ知っている。ヴァージン・シネマグループを買収したフランスの会社だね」と口にしてしまいました。当惑気味の聴衆がまたもや私を見ていました。この場合も誰かが「そっちの意味じゃなくて、このUGCは、ユーザー生成コンテンツ(user-generated content)。つまりアーンドメディア(※)などの意味です」と補足してくれました。

幸い、会話はそこからうまく広がりました。というのは、私自身が何十年もの間、ユーザー生成コンテンツの実際上の推進者だとみんなが分かってくれたからです。このアイデアの核心は、自社の製品やサービスについて顧客が発言する場を設け、その感想を共有し、他の見込み客にも製品の良さを伝えてもらうことです。このゲームは顧客との二人三脚で進みます。

(※)earned media:消費者の自発的な発言や推奨

 顧客の92%が口コミを信頼している

私は最近、ニールセンが行った調査に関するレポートを読みました。それによれば、世界の国々の47%の消費者が伝統的な有料広告を信頼している一方で、なんと、92%は(友人からの推奨といった)口コミのような無料パブリシティを信頼しているのです。

同様にアーンド・メディアのなかには宣伝する側が十分にはコントロール出来ない情報が含まれるものの、ブランドのパブリシティは、むしろ顧客が日々利用しているインターネットやソーシャルメディアに左右されているのです。

これらは本質的には口コミと変わりません。数多くのアプリやプラットフォームによって伝達されるところが違うのです。あなたの友人が「私はX製品を、A、B、Cの理由でいつも使っている」と言えば、それはどんなお洒落なX製品の有料広告よりもあなたに購入させてしまう説得力があります。デジタル技術は、顧客が製品を推奨することをさらに簡単にしたに過ぎません。

この問題を議論する場には、カッコ付きの専門用語が氾濫しがちです。例えば、そこにある「社会的な約束」ごととか、正しい「コンテンツ」の維持とか、「品質指標」となる「社会的シグナル」とか、有料広告と無料アーンドメディアが収斂してデジタルマーケティングの津波を生み出した時の「波及効果」などです。専門用語の言い回しに迷わされてはなりません。顧客との関わり合いこそが決定的に重要であって、策定される個々の戦略は、実際の事業に即したものとなるべきです。

顧客に接触する際は、内側から誘い込むことを忘れてはいけません。内側とはつまり従業員や同僚のことです。ブランドのもっとも影響力のある「コンテンツ」を創るのは彼らである可能性が高いのです。必ず社内のコミュニケーションを育成と維持に努めてください。

私は昔、ロンドンのヒースロー空港に到着したヴァージンアトランティックの搭乗客が、私たちが用意したリムジンに乗り込むと、無断で飛び込み、電話をかけ、彼らとの会話を大いに楽しみました。

彼らに訊いたことは、搭乗者として楽しめた点と私たちのサービスで改善すべき点の2点です。この方法は当時、RGC(Richard-Generated Content)、つまりリチャード創出コンテンツと呼ばれていたようです。これは搭乗客から感想を得るにはとても有効な方法でしたし、ヴァージンをPRする素晴らしい機会でもあったのです。

最近では、私個人のブログ(Virgin.com/RichardBranson)を通じより広範囲な話題について多くの人々とつながっています。ブログにはなぜか数百万人ものビジターがいて、あらゆる種類の議論が活発に行われています。

私にリンクインで800万人のフォロワーがいるなら、起業家のみなさんも年齢制限なしにソーシャルメディアを使って、自分の商業的な利益に役立てることができるのです。

(翻訳/オフィス松村)