ドイツ
ギリシャ問題につづき難民問題でも紛糾!
連帯力を失い、各国がエゴをぶつけ合うEUの惨状

地中海を渡ってイタリアに押し寄せる難民たち 〔PHOTO〕gettyimages

イタリアとフランスの国境で、難民の押し付け合いが激化している。イタリアから逃げ出してフランスに入ろうとする難民の群れを、フランスの国境警察が力づくで阻止しているのだ。

一度フランスに入ってしまえば、難民はそのまま不法滞在者として潜伏するだろうし、保護したらしたで、手間暇と経費がかかる。それならば、まず入ってこないようにするのが一番手っ取り早い。

すると、国境で足止めを食った難民たちが、海岸や駅の近辺で野宿を始めた。主に、エリトリア、ソマリア、スーダンからの難民だが、映像を見る限り、衛生面からいっても想像を絶する惨状だ。しかも、一瞬の隙を狙って、フランスに入ろうと虎視眈々。

結局、イタリアの警察が、抵抗する難民たちを無理やり抱えて撤去したが、もちろん、これで問題が解決するわけではない。イタリアの首相は、声高にフランスのエゴイズムを批判し始めたし、難民の押し付け合いは、これからさらに熾烈になるだろう。

今年、地中海経由でやって来た難民は10万2000人

EU内では、「シェンゲン協定」によって人間の自由な往来が保証されている。ただし、難民にはシェンゲン協定ではなく、「ダブリン協定」というのが適用される。

1990年代に定められたこの協定によれば、難民は最初に入国した国で難民申請、あるいは、亡命申請をしなければならない。難民が他国に移り、そこで申請することは許されない。他の国から来たとわかれば、その難民を、最初に入った国に戻すことができるといった内容だ。

アラブの春が失敗し、あちこちで内乱が起こり始めて以来、難民は劇的に増えた。絶望した人たちは、祖国を捨て、危険を冒してボロ船に乗る。生き延びるための最後の望みだ。

難民が最初に足をつける国であるイタリアとギリシャの窮状がすでに酷い。特にギリシャでは銀行が機能しなくなって以来、難民は過酷な状況にさらされている。水や食料にも事欠き、ほとんど暴動前夜といった様相だ。

〔PHOTO〕gettyimages

いずれにしても、イタリアやギリシャにしてみれば、ダブリン条約は不公平だ。この条約が結ばれた90年には、地中海を渡ってくる難民ボートなどなかったのだ。それどころか、ソ連や東欧、ユーゴの崩壊で逃げてきた何十万という難民を受け入れていたのは、ようやく統一を果たしたドイツだった。ドイツは当時、EU諸国の真ん中にあったわけではなくて、EUの外壁を守る国の一つであった。しかし、21世紀の今、状況は劇的に変わった。

今年になって半年たらずで、地中海経由でやって来た難民は10万2000人にのぼる。そのほとんどをイタリアが一手に引き受けている状況だ。困ったイタリアは、難民が収容施設から逃げ出すのも、見て見ぬ振りをしている。難民はどのみちイタリアに留まりたいわけではない。ギリシャも、もちろん同様だ。

そうこうしているうちに、今度はハンガリーが、ダブリン協定を「技術上の問題により」一時停止したと発表した。ハンガリーには、シリアやイラクやアフガニスタンの難民が、セルビアを通じて陸路で続々と入ってくる。ただ、彼らも別にハンガリーに留まりたいわけではない。

そこでハンガリーはこれまで、出て行こうとする難民たちに関しては、見て見ぬ振りでオーストリアに出国させていたが、ダブリン協定下では、せっかく出て行った難民がまた戻されかねない。それが嫌だから、同協定を一時停止し、出て行った難民は引き取らないと宣言したのだ。

もちろんEUの他の国々は怒ったが、実は、難民問題で非協力的なのはハンガリーだけではなく、東欧の国々は、ほとんど皆、難民はなるべく引き取りたくないと思っている。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら