雑誌 企業・経営
なぜソニーが介護事業に進出するのか
ソニーフィナンシャルホールディングス井原勝美社長に聞く

ソニー生命、ソニー損保、ソニー銀行などを抱える持ち株会社・ソニーフィナンシャルホールディングス。家電の雄・ソニーの子会社で、収益は1兆円超、今や親会社の新たな柱ともなっている事業だ。同社を率いるのは、井原勝美社長(64歳)。携帯端末のソニー・エリクソン(現在のソニーモバイルコミュニケーションズ)を設立して年間売上高1兆円を超えるまでに成長させ、'10年からソニーの金融グループのトップに立つ。

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いはら・かつみ/'50年、島根県生まれ。'73年に東京工業大学工学部を卒業し、三井情報開発を経て、'81年にソニーへ入社。'89年米国スタンフォード大学で経営学修士号を取得。'01年からソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ・エー・ビー社長、'04年よりソニー副社長をつとめ、'10年6月より現職

一変

なぜソニーが保険を? と尋ねられることがあります。それは盛田昭夫(ソニー創業者)が業界の常識を一変させようと願ったからです。

盛田は'81年、ソニー生命(当時のソニー・プルデンシャル生命)の開業式で、「日本には非常に歴史の長い保険会社がたくさんあります。しかし私は、日本に今までなかったような保険会社を作りあげたい」と語りました。その言葉通り、既存の企業に先駆け、高度な知識を持った営業がお客様の人生に潜むリスクをコンサルテーションし、最適な商品を販売する、現在のソニー生命の販売スタイルを作りあげていったのです。

予言

弊社には、ソニーの「ひとのやらないことに挑戦する」DNAが色濃く受け継がれています。たとえばソニーがデジカメのCCD(光を捉える心臓部)を開発した時('70~'80年頃)、技術的なハードルの高さから研究は難航し、当時の副社長は「この投資の回収は21世紀になるかもしれない」とまで語りました。苦労の末、開発は成功。投資回収には年月を要しましたが、現在も、他社が追いつけない盤石の強さを誇っています。

他社を寄せつけない新領域を作るには、長期的な視点が不可欠なのです。盛田はソニー生命についても「この会社は、すぐに利益を生む会社ではない。生命保険ビジネス(の成功までに)は長い時間がかかる。しかし将来、ソニーグループに『この会社があってよかった』と思う時がくるはず」と語り、これも現実のものとなっています。