冗談では済まない百田氏の沖縄軽視発言。第二次大戦のプロパガンダ戦術再来か
佐藤優インテリジェンス・レポートより

「自民党『文化芸術懇話会』と沖縄」

第二次大戦中の日本海軍募集のポスター---〔PHOTO〕gettyimages

【事実関係】
6月25日、東京の自民党本部で行われた勉強会「文化芸術懇話会」において、作家の百田尚樹氏が、「本当に沖縄の二つの新聞社は絶対つぶさなあかん」「沖縄の米兵が犯したレイプ犯罪よりも、沖縄県全体で沖縄人自身が起こしたレイプ犯罪の方が、はるかに率が高い」などと発言した。

【コメント】
1.
6月25日、東京の自民党本部で行われた勉強会「文化芸術懇話会」における自民党国会議員と作家の百田尚樹氏による沖縄蔑視発言事件は、自民党に沖縄差別が構造化されていることを可視化させた深刻な事件だ。

「文化芸術懇話会」は、<設立趣意書によると、芸術家との意見交換を通じ「心を打つ『政策芸術』を立案し、実行する知恵と力を習得すること」を目的としている。>(6月25日産経ニュースより)ということだ。

そもそも「政策芸術」が可能であるという発想自体が、ナチス・ドイツやスターリン・ソ連における政治目的で芸術や文化を利用するというプロパガンダ(宣伝)戦術に通底する。「政策芸術」が可能であるという発想に、自民党の反知性主義的体質が顕著に表れている。

2.―(1)
東京の政治エリート(国会議員、官僚)、全国紙の記者は気づいていないようだが、6月27日に琉球新報と沖縄タイムスが編集局長名で共同抗議声明を掲載したのは、異例の事態だ。筆者が知る限り、過去にこのような事例はなかった。

共同抗議声明には、

<百田尚樹氏の「沖縄の2つの新聞はつぶさないといけない」という発言は、政権の意に沿わない報道は許さないという”言論弾圧”の発想そのものであり、民主主義の根幹である表現の自由、報道の自由を否定する暴論にほかならない。

百田氏の発言は自由だが、政権与党である自民党の国会議員が党本部で開いた会合の席上であり、むしろ出席した議員側が沖縄の地元紙への批判を展開し、百田氏の発言を引き出している。その経緯も含め、看過できるものではない。

さらに「(米軍普天間飛行場は)もともと田んぼの中にあった。基地の周りに行けば商売になるということで人が住みだした」とも述べた。戦前の宜野湾村役場は現在の滑走路近くにあり、琉球王国以来、地域の中心地だった。沖縄の基地問題をめぐる最たる誤解が自民党内で振りまかれたことは重大だ。その訂正も求めたい。>

とある。琉球新報と沖縄タイムスは、実証性と客観性を根拠に百田氏の発言を批判しているのである。

2.―(2)
ここで、百田氏から「本当に沖縄の二つの新聞社は絶対つぶさなあかん」という発言を引き出すきっかけをつくった、長尾敬衆議院議員(近畿比例ブロック、当選2回)の発言について再確認しておく必要がある。

長尾氏はこう述べている。

<「沖縄の特殊なメディア構造をつくったのは戦後保守の堕落だ。先生なら沖縄のゆがんだ世論を正しい方向に持っていくために、どのようなアクションを起こすか」>(6月26日 朝日新聞デジタルより)

長尾氏は、具体的な行動指針について百田氏に助言を仰いでいる。それに対して百田氏は、「本当に沖縄の二つの新聞社は絶対つぶさなあかん」と答えたのである。百田氏は「軽口、冗談のつもりだった」というコメントで逃げようとしているが、長尾氏とのやりとりの前後関係からして、発言を軽口や冗談と受け止めることはできない。

3.―(2)
ここで百田氏は「沖縄人」という言葉を用いている。そもそも日本の統計区分に「沖縄人」というカテゴリーは存在しない。それにもかかわらず、レイプ犯罪を起こしたのは日本人ではなく沖縄人であるという前提で話をしている。

3.―(3)
琉球新報は百田氏の発言に対して、こう反論した。

<公務員であり日米地位協定で守られている米兵と、一般県民を同列に比較することを疑問視する声がある。米兵による性犯罪に詳しい宮城晴美氏は「性的暴行の起訴率も十数%という米兵と日本人とは罰せられ方が違う」と話す。

(中略)宮城氏は在沖米兵の性的暴行の発生率は不明としながら「そもそも単純に比較するものではなく、戦後70年間、米兵が女性に好き放題してきた歴史を考えなければいけない」と強調した。>(6月27日 琉球新報電子版より)

残念ながら、この反論は百田氏や勉強会に参加していた自民党国会議員の心には響かない。なぜなら、この人たちは客観性や実証性を軽視もしくは無視し、自らが欲するように物事を理解する反知性主義者だからだ。

4.―(1)
「文化芸術懇話会」において、自民党が抱える二つの深刻な病理が顕在化した。・・・(以下略)

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol064(2015年7月8日配信)より

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