世界経済 ギリシア
ギリシャ国民はなぜEUに"NO"を突きつけたのか?

危機の震源地でいま起きていること
国民投票を控え、”NO"キャンペーンで演説するチプラス首相 〔PHOTO〕gettyimages

国民の琴線に触れた”政治の素人”

ギリシャの人口は、たったの1100万人だ。今、問題になっている国家債務だって、最初のうちに手を打っておけば、どうにかなったはずだ。

なぜ、こんな小国の救済が、ここまでの大事に至ってしまったのか。EUの崩壊だとか、ヨーロッパの分裂だとか、ここ半年、EUはギリシャに掛かりっきりで、ほとんど麻痺状態に陥っている。

チプラス(首相)&ヴァロファキス(財相)コンビが政権の座についたのは今年の1月だ。債権者であるEU、IMF(国際通貨基金)、ECB(欧州中央銀行)は、自分たちはギリシャ国民に援助の手を差し伸べていると強調した。しかしギリシャ側は、引き続き援助を必要とはしていたものの、そこに付けられた条件を変えようとした。それどころか、二人はそのために、交渉をただひたすら撹乱し始めたのだった。

もちろん、彼らが今までのギリシャの政治家と違うことは、最初からわかっていた。若いチプラス首相は、EUという権威ある国際舞台にネクタイも付けずにやってきては、場違いなほど明るい笑顔を振りまいた。一方アテネでは、ヴァロファキス財相がバイクで国会議事堂に乗り付け、シャツの裾をピラピラさせながら、足早に階段を駆け上っていた。

そう、彼らはまるで違っていた。そして、正真正銘の社会主義者だった。

とはいえ、交渉相手であるEUやIMFやECBの大物たちは長らく、この二人だって、今までと同じく、思い通りに操れるだろうと思っていたはずだ。どのみち政治の素人だ。要は、メンツを潰さないようにすればよい。何と言っても財布を握っているのはこちらで、彼らは破産寸前なのだ。今は抵抗していても、結局は服従するほかに道はないじゃないか、と。

ところが、そうは問屋がおろさなかった。EUとIMFとECBの面々は、一つのことを見逃していた。それは何か? この二人の必死の姿が、疲れ切っていたギリシャの国民の琴線に触れたことだ。ボロボロになった国民の心の中で何かが生まれ、膨張し始めた。しかし、EUや金融界の大物たちはそれに気付かなかった。

反対票を投じるチプラス首相 〔PHOTO〕gettyimages
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