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エリック・シュミットはいかにしてGoogle大躍進を支えたか
新しいマネジメントのかたち
2000年代のGoogleの躍進の立役者、エリック・シュミット 〔Photo〕Getty Images

 

エリック・シュミットのリベラルアーツな経営学

TEXT 池田純一

 Google社員の理想形「スマート・クリエイティブ」とは?

現在GoogleのExecutive Chairmanであるエリック・シュミットは、シリコンバレーの成長を目の当たりにしてきた工学者/経営者の一人だ。

スタンフォードと並ぶシリコンバレーの研究拠点であるUCバークレーの博士課程在学中にUNIXの開発に携わり、その仲間たちとSun Microsystemsの創立に加わった。NovellのCEOを経て2001年にGoogleのCEO着任後は、2000年代のGoogleの躍進を支えた。

そのシュミットの経験が記されたのが、ジョナサン・ローゼンバーグとの共著である『How Google Works』(以下、HGW)だ。

しかし、このHGWが興味深いのは、いきなりその冒頭で、二人の経営者としての経験値は一旦ご破産にして、ゼロからGoogleの経営に取り組まなければならなかったと明記されているところにある。

巨人Microsoftの猛攻をかわすには、圧倒的な支持をユーザーから得られる斬新なプロダクトの開発に勤しむしかなく、中期戦略のようなロードマップは無意味だった。プラットフォームという新たな事業体であるGoogleに、従来の事業体である企業の論理を当てはめるのは無理があった。

そんな中、二人がHGWを記す上で中核に据えたのが、Google社員の理想形である「スマート・クリエイティブ」という存在だった。

スマート・クリエイティブとは、情報をルールに従って淀みなく処理する、単なる知識労働者(ナレッジワーカー)ではない。多才で、多様な分野に旺盛な好奇心を示し、それでいて専門性とビジネススキル、創造力を併せ持った人材だ。ユーザーから価値を認められる斬新なプロダクトを開発し続けていくために、スピードとクオリティの双方を上げることができる有能な人材のことをいう。

HGWは、とどのつまり、このスマート・クリエイティブを世界中からいかにしてかき集め、彼らにその才能をいかんなく発揮してもらうか、その環境づくりを巡る悪戦苦闘の記録だ。

具体的には、企業文化、戦略、人材採用、意思決定、オープン・コミュニケーション、永続的イノベーションの六つについて、Googleが何をしてきたかが記されている。

・・・とここまで来て、あまりに日本の企業文化とは違いすぎて参考にはならないと思われた人もいるかもしれない。確かにGoogleだからこそ成功できたという部分もあるのだが、しかしそのような理由だけから、HGWを遠ざけるのはもったいない。