維新の党の深慮遠謀
『週刊現代』古賀茂明「官々愕々」より
〔PHOTO〕gettyimages

維新の党の動向に注目が集まっている。「維新 安保関連法案の対案巡り意見の違い表面化」(6月26日NHK)という見出しで、維新の分裂の危機かなどと思っていると、1週間も経たないうちに「維新 安保関連法案の対案 2日決定し各党と協議へ」(6月30日NHK)と報じられて、なんだ、いやに簡単にまとまったなと肩透かしを食らった有権者も多いだろう。

一見、フラフラしている印象があるが、実は、その裏には党内の意見対立の巧妙な調整ぶりと非常に緻密な作戦の展開が隠されている。これは、明らかに橋下徹氏の戦略だと思われる。同氏の戦略とはどんなものか。そのシナリオを予測してみよう。

まず維新は、早々に安保法案の対案をまとめて各党に提示する。自民党は、これに対して最大限の敬意を払い、維新こそ自民党と議論するに足る唯一の責任野党だと持ち上げるだろう。

維新がまとめる法案は、内容的には、与党案とはかなり異なり、違憲の疑いを最小化し、一見すると、非常にハト派的に見える。従って、「タカ派自民」対「ハト派維新」の論戦が行われることになる。また、維新は、与党案にはない領域警備に関する法案も同時に提案するが、これは、自民党もまじめに修正協議に応じることができる内容のものになっているはずだ。

一方、民主党は、対案を示さないまま、与党案にも維新案にも反対する。

国会では、安倍内閣の閣僚と並んで、維新の議員が維新の法案に関する質問に対する答弁者となり、民主や共産の質問に対して答える。これによって、維新が国会の主役となる。場合によっては、答弁者として江田憲司前代表も登場し、得意の弁舌で民主党議員をやり込めるという場面も出てきそうだ。

これらの状況をマスコミは面白おかしく伝えるだろう。こうなると、国会審議はかなりの程度、実質的なものであるかのように国民には見えてくる。何日か集中的に審議が行われれば、採決をすることが自然だという雰囲気が作られ、仮に民主党が暴力的にこれを阻止しようとすると、対案も出さないで、民主主義の否定ではないかなどという論調も出てきそうだ。

こうなれば、もう与党の思惑通りだ。与党法案と維新法案双方を採決するということになれば、いくら民主、共産が「強行採決反対」と言っても、国民には響かない。維新が採決は時期尚早と言っても、自分の法案の採決には出て行かざるを得ないし、まして、領域警備法が可決されるのであれば、少なくともそこだけは出席せざるを得ない。

かくして、安保法案は大きな混乱なく成立することになる。

つまり、維新がハト派的対案を出すことによって、逆に与党の違憲法案成立を後押しするわけだ。これによって、橋下氏は安倍総理に莫大な貸しを作ることができる。来年の参議院選挙後に安倍政権に入閣というシナリオもあながち夢とは言えない。

以上は、橋下氏の思惑通りにことが運んだ場合だ。もちろん、そんなに単純に進むとは思えないし、そんなことを許したら日本の将来を過つことになる。

やはり、国会には期待できない。いつもの結論、「我々国民が立ち上がるしかない」のである。

『週刊現代』2015年7月18日号より

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