中央アジアにおける『第二イスラム国』誕生の可能性

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.063 「インテリジェンス・レポート」より
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【事実関係】
5月28日、タジキスタンで失踪していた同国内務省傘下の治安警察の司令官グルムロド・ハリモフ大佐が、インターネットを通じて「イスラム国(IS)」への参加を表明し、「われわれはタジキスタンに戻り、シャリーア(イスラム法)に基づく国をつくる」と宣言した。

【コメント】
1.―(1)
産経新聞モスクワ支局の黒川信雄記者が、最近の中央アジアにおける「イスラム国」の影響力拡大に警鐘を鳴らす、興味深い報道を行った。

<タジキスタンでは5月28日、失踪していた内務省傘下の治安警察の司令官がインターネットを通じ、イスラム国への参加を表明。ロシアや米国で対過激派の訓練を受けてきたという司令官は、ラフモン大統領に「われわれはタジキスタンに戻り、シャリーア(イスラム法)に基づく国をつくる」と宣言し、国内外に驚きが広がった。>(5月19日 産経ニュースより)

1.―(2)
この司令官とはグルムロド・ハリモフ大佐で、同人についてCNNはこう報じた。

<米国務省は31日までに、過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」への加入や聖戦を宣言したタジキスタンのテロ対策担当の警察司令官だった人物が、同国や米国内で5回にわたり国務省が企画した対テロ訓練に参加していた事実を明らかにした。

この元司令官はグルムロド・ハリモフ大佐。新たに公表したネット上のビデオで訓練に加わるため3回、米国を訪れた過去を暴露。このうち少なくとも1回はルイジアナ州で実施されたと述べた。米国務省はこの主張が正しいことを確認し、訓練は2003~14年の間に実施されたことを明かした。

対テロ訓練は安全保障面で米国と協力関係にある諸国の警察や軍関係者らに最新のテロ対策戦術などを教示するもの。ISISなどの過激派を想定していた。

米国務省当局者によると、ハリモフ元司令官は米国内などで危機対応、特殊作戦の戦術管理や戦術指導者訓練などの課程を終えた。

元司令官はビデオ映像の中で、訓練参加中に目撃した事柄が米国への敵意を募らせる要因になったとロシア語で主張。「聞け、米国民よ。イスラム教徒を殺害するために兵士たちを訓練していることを見た」などとののしった。>(5月31日 CNN.co.jpメルマガより)

1.―(3)
(1)の産経ニュースで黒川記者は、中央アジアにおけるイスラム教原理主義過激派の動向について、こう報じている。

<アフガニスタンなどに拠点を持ち、ウズベキスタン出身者が多数参加するイスラム武装組織「ウズベキスタン・イスラム運動(IMU)」が、連携してきたイスラム原理主義勢力「タリバン」が弱体化したことを理由に、イスラム国への支持を表明したと報じられている。

ロシア連邦保安局(FSB)や各国政府の推計によると、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギスなどからはそれぞれ数百人がイスラム国に参加しているとされる。実際には数千人にのぼるとの試算もある。

2.
中央アジアのキルギス、タジキスタンは事実上の破綻国家で、国内におけるイスラム原理主義過激派の策動を封じ込めることができない。ウズベキスタンも、タジキスタン、キルギスと国境を接するフェルガノ盆地を実効支配することができていない。アフガニスタンには、「イスラム国」のテロリスト訓練基地ができているとの有力情報もある。・・・(以下略)

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.063(2015年6月24日配信)より