コナカ・湖中謙介社長「いまは『自分だけの一着』を薄利多売する時代が来ていると思う。だから、売り場面積が、たった10坪程度のカスタムオーダーのお店を出しました」

紳士服のコナカ。スーツが1ヵ月のお給料では買えなかった時代に、企業や官公庁を訪ねて職員に月賦で売る「職域販売」で成長した歴史ある企業だ。その後、郊外に店を構え、大量仕入れによる薄利多売で売り上げを伸ばした。現在は駅前や商業施設で『スーツセレクト』など新業態を展開。創業家を継ぎ、事業を拡大した敏腕、湖中謙介社長(54歳)に話を聞いた。

* * *

こなか・けんすけ/'60年、大阪府生まれ。'82年にコナカ(当時の日本テーラー)へ入社、'84年神戸大学法学部を中退。'91年に取締役、'99年に常務取締役、'03年に専務取締役に就任。'05年から現職。紳士服のフタタ、KONAKA THE FLAGなど多業態を展開し、連結売上高約700億円の企業を率いる

出会い

少し前、ニュージーランドの田舎の牧場で、15マイクロン(15mmの1000分の1)のウールを見つけたんです。羊毛は細いほど風合いがよく、従来は高級品でも18~20マイクロンだから驚きました。しかも毛足が長いから、圧倒的に保温性がいい。糸が細すぎて繊細で、長時間着るスーツには向かないため、コートにして『リミテッドプレミアム』と名付けました。

トニーさんという名の牧場主は、ずっと独りで羊の改良を行っていて、私が訪れるとこうおっしゃってくれた。「キミ、やっと来たか。この羊毛の価値がわかって、使いこなせる人物が来るのを待っていたんだよ」と。私こそ、自分の足で素材を探してよかったと感動しましたね。

鼓舞

売れ筋は、シャワーで汚れを流せる『シャワークリーンスーツ』です。オーストラリアのウールの企業と関係がよく、ご担当者から「ウールは汚れが染みこむのでなく、表面に載っているだけ。シャワーで洗い流すことならできるかも」と情報をいただいたんです。開発は困難を極め、社員は幾度か「できません」と言ってきましたが、「できないなら、だからこそ、やってみよう」と鼓舞したことを覚えています(笑)。