腐った農政
〜成長戦略は官僚と族議員のためにある〜

『週刊現代』古賀茂明「官々愕々」より
〔PHOTO〕gettyimages

「日本再興戦略」の改訂版が6月30日に閣議決定される予定だ。報じられる中身を見ると、はっきり言って何もない。安倍政権になって毎年期待ハズレに終わっているが、今年は特にひどい。「小粒なものの羅列」と、安倍政権を支持する大手紙からも揶揄される始末だ。

一方で、おそらく分量だけはかなりのものになるだろう。毎年指摘していることだが、成長戦略は国民のためにあるのではなく、官僚と族議員のためにあるからだ。各省庁は、この成長戦略に書き込まれたことを根拠に、夏の予算要求を出していく。いわば、予算要求台帳に成り下がっているのだ。

「成長」戦略の中身がないことの象徴的な例を一つ挙げよう。

農協改革が竜頭蛇尾に終わったことは周知の事実だが、成長戦略の柱と謳われているのがコメの輸出産業化だ。しかし、現実にはこれとは正反対の政策が大々的に繰り広げられている。

輸出産業に育てるためには、増産して、価格も下げることが必要だ。そのためには、減反政策を真っ先に廃止すべきだが、その実施は'18年。しかも、今年度は、事実上減反を強化する政策を強力に推し進めている。

主食用米の生産目標は、'14年の788万tから'15年751万tに引き下げる。さらにその目標より低い739万tを「参考値」として示し、これを達成すれば追加の補助金を出す。

これとは別に、主食用米を減らすために飼料用米に無理矢理転換させる政策も推進する。飼料用米の価格は主食用の10分の1。作っても大赤字になるので、その分補助金を大盤振る舞いする。日経新聞によれば、4月から、農水省の部課長級が全国行脚して飼料用米への転換を呼びかける大キャンペーンが行われているそうだ。

一方で、農水省は、'14年産のコメの価格下落を受けて、農家に60㎏当たり2500円、総額514億円もの補填金を支払うという。'07年に発足した収入減少影響緩和対策制度に基づく支払いだが、'07年の313億円を上回り過去最大になる。

さらに、JAグループは'15年産米の卸向け販売価格を関東産コシヒカリで4%引き上げるという。生産者の手取り増を狙っているのだが、ただでさえ消費者のコメ離れが進んでいるのに値上がりすればコメ離れを加速する可能性が高い。

これだけ至れり尽くせりに見える保護策を講じても耕作放棄地はどんどん増える。しかも、その放棄地を農家は手放そうとしない。耕作しなくても、農地として税金を他の用途の土地に比べて二桁以上安く優遇されているから、そのうち開発計画に当たって高値がつくのをコストなしで待っているのだ。

どこまでこの国の農政は腐っているのか。こんなまやかしが持続できないことは、当の農家の方が良くわかっているようだ。将来に見切りをつける農家はますます増えるだろう。

安倍総理の頭の中は、「戦争法案」のことでいっぱい。「改革断行国会」と名づけられた今国会は、本コラムで予言した通り('15年2月21日号)、完全に「戦争実現国会」へと変貌してしまった。これでは、日本の「再興」はいつまで経っても画に描いた餅のままだ。

『週刊現代』2015年7月11日号より

* * *

古賀茂明「改革はするが戦争はしない」フォーラム4
・月額:400円(税抜価格)
・毎月第1・第2・第4金曜日配信


「日本の再生を考え」「日本再生のための国民的キャンペーンにつなげていく」ことを目的に、個人的な情報発信の手段ではなく、日本再生を真剣に考える方々との交流のための手段、党派を超えた日本再生キャンペーンの活動の拠点を作る試みとして、志を共にする読者とつながることを目的としたメルマガです。

▼お申込みはこちら
https://mall.ismedia.jp/index.php?dispatch=products.view&product_id=8767

* * *

古賀茂明・著
『国家の暴走 安倍政権の世論操作術』
(角川Oneテーマ/税別価格:800円)
 ⇒Amazonはこちら
 ⇒楽天ブックスはこちら


日本人にとって"今、そこにある危機"それは日本が[戦争のできる国」となり「戦争なしでは生きられない国」となること。安倍政権の世論操作による"国家の暴走"はどうすれば食い止められるのか?