EUはこのままギリシャを見放して本当にいいのか?
〔PHOTO〕gettyimages

今週はギリシャ問題で世界のマーケットが荒れている。

日曜日、ギリシャのツィプラス首相は、IMFへの債務返済のためのつなぎ融資の見返りとして提示された緊縮策の是非について、7月5日に国民投票を行うと宣言した。だが、この時点ですでにIMFへの返済が滞ることは誰の目にも明らかであった。

確かに、月曜日に日経平均株価が600円近く下げるなど、マーケットにいくばくかのマイナス影響が出たものの、火曜日以降は下げ止まり、日経平均株価はわずかながらも上昇に転じている。

ギリシャが、借金の返済期限が近づいたタイミングで債務繰り延べを獲得するための「ゲーム」を仕掛けるのは、今にはじまった話ではない。ゲームは繰り返し行われる度に、相手の手の内が読めてくるし、ゲームプランも変わってくるのが常である。

その意味で、今回は、これまでギリシャが用いてきた「必勝戦略」のいくつかが機能しなくなりつつあり、世界の市場関係者もそのことがだんだんわかってきているので、マーケットも1日で平静を取り戻したのだと思う。

ギリシャのブラフが通用しなくなっている背景

ところで、ギリシャはこれまで、

1)債務繰り延べ(もしくはつなぎ融資)を否定された場合には「ユーロからの離脱」をちらつかせる


2)他の欧州諸国(特にドイツ)が繰り延べの見返りとして要求する緊縮財政に対して、第二次世界大戦の賠償問題を持ち出す(ギリシャはナチスドイツのアフリカ戦線への食糧供給基地にされたため、多数の餓死者が出たという悲惨な歴史がある)

といった戦略を常套手段としてきた。

「ユーロ離脱」の可能性をちらつかせることができるのは、ギリシャがアフリカや中東に近接するという重要な位置を占めており、ユーロだけではなくEUにとっても地政学上、極めて重要な意味を持つからである。

しかし、最近の国際情勢の変化は、このギリシャの地理的優位性を低下させつつあり、しかも、これをドイツをはじめとしたの欧州諸国に見透かされているのではないか、というのが筆者の考えである。

アフリカや中東へのアクセスが重要なのは、これらの地域に属する国々が、BRICsに代わる「高成長フロンティア」だと考えられてきたからではないだろうか。だが、先日のエボラ出血熱騒動や、ISの台頭、シリア内紛等が入り乱れて治安が混乱する中東・アフリカ地域の成長ポテンシャルは大きく損なわれているのが現状である。

また、これら「フロンティア諸国」の成長モデルは、石油等の天然資源で稼いだ外貨によって投資を呼び込み、それを梃子に、天然資源に依存しない産業(製造業)を育成していく、というものであったと考えられるが、最近の原油価格の低迷(スパイラル的な低下の局面は終わったようにみえるが、決してリバウンドしているわけではない)等で、外貨獲得が思うように進まなくなっている。

逆に天然資源価格の暴落によって為替レートの暴落にも見舞われ、その防衛のために外貨準備を大きく減らしはじめている国も出てきた。さらに、これらの国々に急接近していた中国も、このところ株価の急落が顕著になってきた。中国はギリシャにも接近していたが、これもアフリカへの進出の足掛かりにしたいとの思惑からだったのだろう。

だが、中国では、社会融資総量が急減するなど、信用収縮が著しい。信用収縮をともなう景気の後退は、段階的な利下げや預金準備率の引き下げで食い止めることは困難であり、中国も今後、量的緩和政策の導入を如何に迅速に進めるかという「ゲーム」に入っていくと思われる。

このような局面では、社会主義国にもかかわらず、貧富の格差の拡大が国内の政情不安に結びつきやすくなるので、中国政府はより国内の締め付けを強化する可能性がある。そうなれば、ギリシャの面倒を見ている場合ではない。

これまで、債務繰り延べゲームにおけるギリシャの交渉力の源泉は「アフリカ・中東へのアクセス権を担保にすれば、いつでも中国やロシアから借金ができるので、いつユーロを離脱しても困らない」というブラフであったが、今や、それも通用しなくなっているのだ。

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