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米国を守れば「抑止力」が高まるなんてあり得ない!
米中のはざまで生きる日本のあるべき防衛戦略とは?
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「抑止力」の壁を越えて「専守防衛」を再考する

(文・柳澤協二)

「抑止力」というマジック・ワード

5月14日、安保法制関連法案の閣議決定後の記者会見で安倍首相は、「日本が米国の戦争に巻き込まれることは『絶対に』ない」と述べた。

その理由は、「日米同盟は完全に機能すると世界に発信することによって抑止力はさらに高まり、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなっていくと考える」からだという。今回の法制に賛同する専門家といわれる人たちも、同様の理由で、安保法制を歓迎している。

この論理は、一言でいえば、「日本がアメリカの軍艦を守ることによって抑止力が高まり、日本が攻撃されることがなくなる」というものだ。

だが、アメリカの軍艦を守れば、当該アメリカの軍艦への攻撃は抑止されるかもしれないが、それ以上のことは何ら論理的に証明されない。

むしろ、アメリカの軍艦を守ることによって日本が戦争に参加することになり、かえって日本への攻撃を誘発するかもしれない。まして、遠く南シナ海でアメリカの軍艦を守れば、その分、日本の防衛は手薄になる。

安倍政権発足以来これまでの集団的自衛権の議論を聞いていると、すべてはこの「抑止力」というマジック・ワードで正当化されてしまっているように見える。

国民の中にも、中国や北朝鮮への不安から、抑止力が高まるなら仕方がない、と考える人が少なくないようだ。