雑誌
少年Aのベストセラー『絶歌』 どう読むのが正しいのか
青木理×香山リカ×中島正純
手記では、校門に淳くんの頭部を置いた時の様子が克明に記されている〔PHOTO〕wikipediaより

酒鬼薔薇聖斗の手記が、波紋を広げている。「買うこと自体が不謹慎」と批判も起こる中、いまだ売れ続けている。ジャーナリスト、精神科医、犯罪の専門家が彼の「告白」をどう読み解くか語り合った。

実名で書くべきだった

香山 この手記『絶歌』は、初版10万部に増刷を重ねるベストセラーになる一方で、「こんな本は出すべきじゃない」「印税で儲けやがって」という否定的な反応が多いですね。

青木 ベストセラーになるのも無理はない面もあります。'97年当時14歳の「少年A」が、山下彩花ちゃん、土師淳くんの命を奪った「神戸連続児童殺傷事件」が世の中に与えたインパクトは大きかった。犯行声明を発するという劇場性もそれを煽り、その後の少年法厳罰化の契機にもなりましたから。

中島 当時大阪府警の警察官だった私にとっても、最も忘れられない事件です。

私も、この本には否定的なんです。元同僚の警察官たちと話しても、この本を世に出し、印税が元少年Aに支払われることに対して、「そもそも買うべきではない」という反応がほとんどでした。

香山 ただ、犯罪者が手記を出版するケースはこれまでにもありました。連続企業爆破事件の犯人で確定死刑囚の大道寺将司は3年前、句集を出版して、しかも賞まで獲っている。秋葉原通り魔事件の犯人でやはり死刑が確定している加藤智大も、これまでに2冊も手記を出版しています。

それらがほとんど騒がれなかったのに、この手記については、「読むこと自体、少年Aを認めることになるので絶対に読みません」という意見があり、人気ロックバンド・GLAYのメンバーが本の表紙写真をネットに投稿しただけで「ガッカリしました」と炎上してしまう。この落差はどこから来ているんでしょう?