胡錦涛がオバマとの首脳会談に
動いた「国内事情」

米中融和でも鳩山首相は蚊帳の外

 中国の胡錦濤・国家主席(共産党総書記)は、4月12~13日に世界の47ヶ国の首脳と国連(UN)、北大西洋条約機構(NATO)、国際原子力機構(IAEA)の3つの国際機関が参加するワシントンでの「核セキュリティ・サミット」に出席するため訪米する。

 同サミットの議長を務めるバラク・オバマ米大統領との米中首脳会談は12日午前に行われる。

 わが国の外交当局はこの間、米側との非公式折衝を続け、サミット期間中の日米首脳会談実現を目指したが、「普天間問題」の影響が大きく鳩山由紀夫首相の願いは叶わなかった。

 しかしオバマ大統領は、胡錦濤主席をはじめインドのシン首相、ドイツのメルケル首相、ロシアのメドヴェージェフ大統領など9ヵ国の首脳とは会談するのだ。

 同盟国・日本だけがオミットされたのである。

 首相のリーダシップ不在がわが国の外交・安保政策にいかに多大なダメージを与えているかについてはまたの機会に譲り、今回は中国のしたたかな外交政策について言及したい。

 オバマ大統領のチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世との会見、人民元切り上げ問題(為替操作批判)、米インターネット検索最大手グーグルの撤退問題、台湾への武器売却など、2月になってからだけでも米中関係は悪化の一途を辿ってきた。

 そうした中で胡錦濤政権は対米融和へと大きく舵を切ったのである。その決断の裏には、戴秉国・国務委員(副首相級・外交担当)の存在がある。

 貴州省生まれの戴秉国は、中国国家指導部にあっては珍しい少数民族・トゥチャ出身で、共産党中央対外連絡部長、外交部筆頭副部長を経て今日に至る。そもそも戴秉国が頭角を現したのは、皮肉なことに対連部長時代に対日関係を深めたことによるものだ。

 98年4月、当時副主席(共産党政治局常務委員)だった胡錦濤が来日、天皇との会見が実現した。普通の日本人には不思議に思えることだが、中国の国家指導部にあって次期国家主席を目指す者には、訪日・天皇会見が"登竜門"になっているのだ。この「訪日成功」を胡錦濤が高く評価した。

 さらに東京滞在中、当時の橋本龍太郎政権の「影の最高実力者」と言われた野中弘務自民党幹事長代理と会い、中国訪問を要請した。野中氏は、
(1)南京を訪問し南京虐殺記念館を訪ねたい、
(2)当時の江沢民・国家主席(共産党総書記)の右腕とされた曾慶江・党組織部長と会談したい―を訪問の条件とした。

 そして翌月に野中訪中は実現し、これを契機に野中・曾慶江ラインが確立したのだ。

 つまり戴秉国は、胡錦濤・国家主席と、今なお「太子党」のドンとして隠然たる影響力を保持している曾慶江・元国家副主席の2人を後ろ盾に、中国の対米、対日、対ロ政策の司令塔なのだ。その戴秉国が今回、胡錦濤に対し対米関係改善を強く進言、訪米が実現することとなった。

 加えて、米中戦略対話のカウンターパートであるスタインバーグ国務副長官を通じてオバマ大統領とのトップ会談にこぎつけたのである。

高まる共産党一党支配への不満

 では、なぜ中国はここに来て外交攻勢に打って出たのか。もちろん、理由がある。そこで注目すべきは、2年前の08年12月18日の胡錦濤演説である。

 経済の改革・開放30周年式典が北京の人民大会堂で開催されたが、そこで胡錦濤は「中国共産党の政権党としての地位は永遠でもなく不変でもない」と、これまでの国家指導部ではあり得ない率直な危機感を吐露したのだった。

 内陸部を中心に1日平均100件近い暴動が起きているとされるほど国内の格差は拡大し、国民の「共産党一党支配」への不満が高まっているのだ。政権の全エネルギーを内政に傾注するためには外交に懸念があってはならない。背に腹は変えられないということなのだ。

 それにしても、さきほどの胡錦濤の伝で言えば、昨年12月に天皇との「特定会見」を実現した習近平・国家副主席が12年秋の第18回共産党大会で次期総書記に選出されること間違いない。

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