雑誌
空前の好業績に沸く自動車業界 
春闘2015悲喜こもごもの舞台裏を振り返る 

昨年から安倍政権が賃上げを企業側に要請し、異例の"官製春闘"などという言葉まで飛び交っていたが、今年もその流れは変わらなかった。

賃金相場を形成するのに大きな影響力を持つクルマ界のベースアップ(ベア)だが、果たしてどのような結果だったのか。国産自動車メーカー8社は各社横並びで6000円を要求していたのだが……!?

春闘2015を今あらためて振り返り、先行きを考える。

PART1 思わず高笑いが……!?ホクホク顔の日産社員

円安を背景にした好業績で事前から各社の高額回答が見込まれた今年の春闘だが、昨年の決算はいったいどうだったのだろうか?

翻って'14年3月期決算の数字をみると、左の表にまとめているが国産自動車メーカー8社のうち、海外生産比率の高い日産とホンダを除き、トヨタなど6社が本業での利益を示す営業利益、最終利益ともに過去最高を更新している。

特に営業利益で対前年度比3・4倍のマツダを筆頭にスバルが2・7倍、三菱が83・2%増、トヨタが73・5%増などと各社軒並み大幅利益増となっていた。

各社とも1ドル=100円程度の為替レートを想定しており、'12年3月期の83~84円に比べ大幅な円安で差益を計上していた

そして、その最大の要因となったのがそれまでの超円高が是正されて円安になったことだ。

もちろん、好決算となったのは円安に加え、昨年4月からの消費増税前の駆け込み需要、市場規模の大きい北米市場での需要回復といった新車販売の好調さもさることながら、メーカー各社が取り組んできたリーマンショック後のコスト削減や経営体質強化などが実を結んできたことも挙げられる。

いわゆる"アベノミクス効果"による円安、株価上昇により業績が上向き、そこに筋肉質な経営体制に転換された各社の地道な努力によって利益が出せるようになったことが大きいワケだ。

これを受けて今年の春闘も各社が昨年を上回る高水準での回答が相次ぎ、年間一時金(ボーナス)についても満額回答となるケースが続出したのだった。

それでは国産メーカー各社の結果についてみていきたい。

全社が要求額6000円の横並びとなった今回の春闘、5000円で自動車メーカートップとなる高額回答となったのが日産だ。

この数字は電機業界を含め、製造業全体のなかでも最高水準となる数字。また、年間一時金も3年連続で満額回答となる5・7ヵ月となり、昨年のベア3500円に続いて業界首位の高額回答が出されたワケだが、日本市場での販売状況を鑑みればそこまでの回答が出せるとは思えないのだが……。

ということで社員はどう受け止めているのか、日産広報部に電話でコメントを求めると、

「いやあ、ウチは成果主義になっている会社なので、単純に(回答額を)他社さんとは比較できないんですが、それでも我々組合員がモチベーションを高く保つのにふさわしい数字を出してくれたなって思います」と、電話口で思わず頬笑んでいる姿をこちらが手に取るようにわかるくらい、弾んだ調子で話してくれた。

とは言いながらも国内市場での販売が厳しいということを真摯に受け止めているらしく、

「問題はこれからです。これから1~2年内に日本に投入される予定のニューモデルが少ないので、グローバル市場でも特に競争が激しい国内市場でどのように販売戦略を立てていくのか、その点に尽きるのではないかと思っています。それに向けて我々組合員が団結して取り組んでいくことを、ひとりひとり真剣に向き合わないといけないですね」と気を引き締めていた。

続いて日産に次ぐ4000円の回答となったトヨタ。昨年の2700円に次いで1300円上積みとなる回答となり、比較できる'02年以降の数字では最高額となった。ある社員は、

「個人的に(4000円は)価値ある数字だと思っています。労使交渉に臨んでくれたトヨタ労組の鶴岡光行執行委員長の尽力のおかげですね。今後予定される消費増税のことも考えて双方が妥結できる金額が出たことは大きいです」と納得。

しかしながら、日産に1000円の差を付けられることになったことについて聞くと、

「数字だけ見ると負けていますが、日産さんは複雑な計算を経て春闘の回答額が出ると聞いています。ですので特には気にしていません」とのことだった。

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