「説得力」を生み出す最強の手段とは? 
コミュニケーション・スキルの達人が明かす

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「たとえ話」と説得力

(文・藤沢晃治)

「たとえ話」の絶大な力

今回、『「説得力」を強くする』という私の7冊目のブルーバックスを刊行させていただきました。本書のテーマは「説得力」ですが、私はズバリ言って、説得力を生み出す最強の手段は、論理的説明ではなく、「たとえ話」だと思っています。

例えば、国家財政の破綻的状況を何兆円という単位の数値で説明されてもあまりピンと来ません。しかし、「家計で言えば、月40万円の収入の家庭で毎月120万円の出費をして生活しているようなもの」と説明されると、急に実感が湧きます。身近な家計になぞらえられると急に説得力が増し、「国家はとんでもない借金生活をしてるんだ!」と納得させられます。

このように、たとえ話には、伝えたい意図を短時間で相手に納得させる絶大な効果があります。

皆さんの周囲にも、仕事中だけではなく雑談中でさえ、気の利いた「たとえ話」を連発する人はいませんか? 

本書では、人を説得する際に極めて効果的な「たとえ話」を、誰でも簡単に思いつけるようになるコツや具体的なテクニックも詳しく紹介しています。たとえ話がうまくなりたいと日頃から密かに思っていた方々には、是非、読んでいただきたいと思います。

「直観」に働きかける

人を説得する場合、一つ一つ理詰めで進む数学の証明のような論理的説明が最強の手段であると私は昔、信じていました。数学の証明は、相手に反論の余地を与えないからです。そうした事情から、当時はロジカル・シンキング関連の書籍を好んで読んでいました。

しかし、認知心理学を学ぶうちに、論理的説明が通用する論理的思考は、人間の思考法の半分に過ぎないのではないか、と考えるようになりました。では、残りの半分の思考法は何かと言えば、それは「直観」なのです。

それ以降、多くの説得力の指南書には大きな見落としがあるように感じていました。一般の指南書が論理的説明の強化だけに目を奪われているように思えたからです。