この1年半でシリコンバレーのトップ技術者500人を招聘? オバマ政権が推進する「米国政府デジタル・サービス」の現状 #PDF15

「『Healthcare.gov』はシビックテックのために起きたことの中で最高の出来事の1つだった」と語るホワイトハウスデジタルガバメントサービスのDeputy Administrator、Haley Van Dyck氏(筆者撮影)

毎年6月にニューヨークで開催される政治・行政・市民参画とテクノロジーに関する国際会議「パーソナル・デモクラシー・フォーラム(Personal Democracy Forum : 以下PDF)」に今年も参加する機会を得ました。

以前に何度かレポートしたとおり(2013年2014年)、PDFには約850人の起業家、社会起業家、アクティビスト、企業の政策担当者、ハッカー、ジャーナリスト、学者、政治家、連邦政府・地方自治体政府・財団・NPO職員などが一堂に会し、「テクノロジーを活用することで行政、政治、市民活動の課題をいかに解決しうるか」というテーマについて、2日間、議論・ネットワーキングが行われるカンファレンスです。前回に続き今回も気になったトピックについてご紹介したいと思います。

今回は米国連邦政府で進んでいるデジタル・イノベーションの様子に関して、昨年春に設立された「UGDS(米国政府デジタル・サービス)」の現状に関するプレゼンテーションについてお伝えします。

登壇したのは、2014年に設立された「UGDS(米国政府デジタル・サービス)」の共同設立者・Deputy Administrator のHaley Van Dyck氏です。UGDSに関しては2月に「シリコンバレーのスーパースターが続々集結! テクノロジーで行政・社会の変革を目指す『米国政府デジタル・サービス』」と題して概要をレポートしたことがあったのですが、当時の状況よりもイノベーションがさらに進化している様子に本当に驚きました。USDSに関してはまず概要を以下にまとめてみます。

PDFで感じた「未来を見てしまったような」錯覚と刺激

・連邦政府の行政サービス・政策を民間企業出身のデジタルテクノロジーの専門家集団により効果的に変革させ、イノベーションの推進、コスト削減、透明性確保などを目指し各連邦政府機関にコンサルティングを行う組織。

・医療保険改革(オバマケア)の柱であるオンライン保険購入システム「HealthCare.gov」が2013年10月1日のオープン直後にクラッシュし、連日メディアでの批判にさらされている中、オバマ選挙キャンペーンのときの仲間や、グーグルやフェイスブックなどで勤務経験を持つプロフェッショナルが数多く招集され、短期間のうちにサイトを復旧させ、スムーズに運用されるよう成功に導いたことがきっかけ。

・2014年8月の設立当初は数名の組織だったが、2014年末の予算申請で満額の2000万ドル(約24億円)を共和党の合意も得て獲得したことで、現在は150名以上の優秀なウェブ・プロフェッショナルが集結している。

UGDSは米国のシビックテック業界ではおなじみになっている事例ではありますが、個人的に印象深かったのは、ちょうど1年前に、英国政府デジタル・サービス部門(Government Digital Service)のエグゼクティブ・ディレクター、マイク・ブラッケン(Mike Bracken)氏がまさにPDFの壇上にあがり、デジタルテクノロジーを活用することで行政サービスを改善することの重要性、そしてそのインパクトを高らかに語っていたことです。

2012年10月にリリースされ、ユーザー目線に立った非常に使いやすいウェブサービスとして世界的にも高い評価を得ている「GOV.UK」の立ち上げから運営までを統括しているブラッケン氏がPDF参加者に国家的行政サービスの改善を呼びかけた2ヵ月後に、米国でも同様の組織が立ち上がり、ちょうど1年後には同じPDFの壇上で目に見えるインパクトを数多く実績として語っているこのスピード感には、「未来を見てしまったような」錯覚と刺激を感じました。

冒頭の写真で映しだされているスライドのメッセージには「『Healthcare.gov』はシビックテックのために起きたことの中で最高の出来事の1つだった」と、2008年のオバマキャンペーンで実績を出し、UGDSの共同設立者・Deputy Administrator であるHaley Van Dyck氏が笑顔であっさりと語っている姿は、明らかに新しい風がホワイトハウスの中で流れていることを感じます。

プレゼンテーションではHealthcare.govのサービスがクラッシュ前と改善後でどれだけの改善が行われたかをデータを持って示しています。例えばオンライン保険購入システムの登録の際に、最長76クリック、平均20分かかっていた登録プロセスが、最長16クリック、平均9分間に短縮されたそうです。そしてこれは単純にグーグル、アマゾン、フェイスブックで日常的に行われているユーザー目線にたった開発手法を適用した「だけ」とも語っています。

また、開発費用に200~300万ドル(数百億円)以上かかっていたあるサービスの事例を紹介し、当時のエラー発生率が25%、処理速度が5秒程度だったものが、優秀な人材を数名投入したことで400万ドル(4.8億円)程度の開発費用で済み、エラー発生率もゼロになり、処理速度も0.02秒にまで短縮されたとのことです。

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