浜矩子×水野和夫対談 
資本の野生化につき進む
「アベノミクス」ならぬ「アホノミクス」

『国民なき経済成長 脱・アホノミクスのすすめ』刊行記念対談

浜矩子×水野和夫 「野生化」する資本主義

写真右:浜矩子氏、左:水野和夫氏

株価は上がっても生活的な実感に結びつかないアベノミクスに警鐘を鳴らしつづけるエコノミスト・浜矩子氏。最新刊の『国民なき経済成長』(角川新書)も話題を集めている浜氏が、同書を推薦し、『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書)などの著作がある水野和夫氏と対談。現代の経済状況を危惧する二人が「野生化」する資本主義の問題を語る。

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世界各国の横並びがもたらす国内の縦並び現象

浜: このところ、世の中の諸問題が持つ方向性が少しより顕著に見えるようになったような気がします。2005年辺りから、私はグローバル時代には「横並びがもたらす縦並び現象」というものがあるように思ってきました。その辺を、どうもかの『21世紀の資本』のピケティ氏も感じていそうだということを発見して、おおいに気を良くしている次第です。

グローバル時代の資本は最適・最効率を求めて地球をまたいで動く。資本が行った先は繁栄します。例えば、インドには海外からの問い合わせを受けるコールセンターが設立されて企業が繁栄している。これが、グローバル時代がもたらす横並び。一方、国境の内側では繁栄の流れに乗れた人と乗れなかった人の所得格差が開いている。内なる縦並び現象です。こういう問題に賢く対処できてこそ、国家・政府・政策の存在意義が評価されるのだと思います。

浜 矩子(はま・のりこ) 同志社大学大学院ビジネス研究科(同志社ビジネススクール)教授。1952年生まれ。一橋大学経済学部卒業。三菱総合研究所ロンドン駐在員事務所長、同研究所主席研究員を経て、2002年より現職。専門はマクロ経済分析、国際経済。

ところが、現実には、国々は逆の方向で存在感を示そうとしている。つまり、強い者をより強くすることで生き残ろうという傾向を強めています。そのことが経済の基盤を崩すことになるのですが、それにまったく気がついていない。典型的なケースが、今の日本です。身も蓋もなく典型的。それが「アベノミクス」ならぬ「アホノミクス」です。

水野: かつては南北問題という格差がありました。その時代は南側を見て見ない振りをしていれば良かった。ところが、オイルショックが起こって先進国の成長率がスローダウンするようになると、南側の所得水準を上げて市場をつくるようになると、その反動で国内に周辺をつくるようになった。それがグローバル化の正体です。

資本主義であれ、封建時代であれ、古代も含めていつの時代でも、搾取する側の帝国と搾取される周辺国が存在しないと成り立たない。ローマ時代は北アフリカから奴隷を連れて来て、周辺国を占領して「すべての道はローマに通ず」とばかり、すべての富をローマに集めた。さすがに近代化後は目に見える奴隷制度は廃止されましたが、西側先進国はセブン・シスターズと呼ばれる国際石油資本の手で原油を抑えることで富を独占した。そして近年では、数十億人の市場であるBRICsに目を付けたり、金融資本市場では「世界の富はウォール街に通ずる」という仕組みをつくったりしている。

国内でも「努力すれば報われる」というおかしな標語を持ち出して格差を正当化しようとしています。労働の規制緩和という口実によって非正規雇用を増やし、意図的に落ちこぼれをつくろうとしている。労働者を永久に低賃金で固定化しようという企みです。資本主義は全員を豊かにする仕組みでは無いということに気がつかなければなりません。

浜: 実にその通りですね。だからこそ、全員を豊かにする資本主義というものを生み出さないと、グローバル時代の向こう側には何も無いという恐ろしい終焉を迎えることになってしまうのだと思います。「資本主義の進化」こそ、大きなテーマになり得ると思います。