現代新書
イギリスは本当にEUを離脱するのか? 
アメリカとの不協和音からスコットランド独立の動きまで
「ふしぎな国」の謎を読み解く!

キャメロン首相。保守党政権誕生後、イギリスは、蜜月だったアメリカ合衆国との距離をとりはじめた photo Getty Images

2015年5月19日、知られざる大英帝国の姿を描いた『ふしぎなイギリス』が刊行された。著者の笠原敏彦氏は、毎日新聞外信部で活躍した国際派ジャーナリスト。ロンドン特派員(1997~2002年)、欧州総局長(2009~2012年)を歴任し、イギリス王室や議会政治に関する数多くの記事を書いてきた。日本人にとって身近な国であるイギリスだが、笠原氏によると、その現実の姿は、日本で一般的に認識されているイメージとは似ても似つかぬものだという。ベテラン記者が明かした、知られざるイギリスの実像とは・・・・。好評インタビューの第2弾!


教科書的な知識では歯が立たない!

Q:本書では、世の中に数多あるイギリス雑学本や歴史書とは違うユニークな視点を持っています。英国王室にまつわるエピソードを面白おかしく紹介するのではなく、様々な矛盾を抱える英国王室を題材にしてグローバル化が進む世界における国家のあり方を論じた構成になっています。相当にユニークな視点ですが、笠原さんは、なぜこのようなパースペクティブ(ものの見方)を獲得されたのですが?

笠原:まずは、自分のものの見方に対する反省です。

正直言って、ロンドンに赴任する前の私は、民主的な政治制度とはこうあるべきだ、という教科書的な「正解」があるものだと漠然と考えていました。イギリスは議会制民主主義を生んだ国であり、イギリスはその一つのお手本なのだろうと思い込んでいました。何か問題が起こると、イギリスなど欧米の制度を学ぼうとする日本の姿に慣れきっていたことも、自分のイギリス観に影響していたのだろうと思います。

しかし、実際に取材することになったイギリスは、教科書的な知識では歯が立たないことが多かった。

最高裁判所の機能も有していた議会上院(貴族院)など、定数すらないヌエのような存在でした。一つの国家のはずなのにスコットランドや北アイルランドではそれぞれ別の紙幣が刷られてもいる。加えて、欧州ではEU(欧州連合)による地域統合が深化し、国家の主権がどんどんEUへ委譲され、主権国家的な部分とEU的な部分がごちゃ混ぜになっている。

そうした、ある意味で混沌とした状況に身を置いていると、教科書的な「正しい国家像」などないんだということが実感でき、国家や社会というものは、そこに住む人々の想像力の産物でしかないのだろうと思えてきました。

そこで、議会制民主主義を育み、グローバル化の最先端を行くイギリス人がなぜ世襲の君主制を支持するのかというエニグマ(謎)から説き起こし、国家や社会とは何なのかという問題にアプローチできないだろうか、と考えた次第です。

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