読書人の雑誌『本』
パナソニック
トップ人事の大抗争はなぜ起きたのか?

「人事」がおかしくなる時、会社がおかしくなる!
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『パナソニック人事抗争史』の現場から

 岩瀬達哉(ジャーナリスト)

熾烈な抗争の引き金は何だったか

「運と愛嬌は備わっているか」

パナソニック(旧松下電器産業)の創業者松下幸之助は、役員候補者のリストを前に、必ず人事担当役員にこう質問していたという。

松下幸之助の「遺言」が後に熾烈な抗争の引き金に

大阪・船場(せんば)の丁稚奉公から叩き上げ、一代で世界的な家電メーカーを創り上げた幸之助には、「運」と「愛嬌」がリーダーに欠かせない資質との思いがあった。困難な仕事をものにするには、能力や気力、体力以上に、運を味方につける天賦の才と、愛嬌のある魅力的な人柄が備わっていなければならない、という本能的確信である。

私が、『パナソニック人事抗争史』の取材を通じて知り合った旧松下電器やパナソニックの役員OBたちも、押し並べて愛嬌のある人たちだった。しかしどういうわけか、彼らの運は幸之助亡きあと、一時的であれ急速に失われていった。

パナソニックの人事抗争が、いかに彼らを翻弄し、経営を空転させ、社運を傾かせていったかの詳細については、本書に譲ることにする。

ここでは人事抗争の引き金となった出来事と、抗争劇における容赦のない潰しあい、そして「人事」がおかしくなる時、会社がおかしくなるという普遍の真理を垣間見ておくことにしよう。